July, 22, 2019, Washington--米国海軍研究所(NRL)の研究チームは、より効率的でアイセーフな強力レーザを作製するためにナノ粒子を利用する新しいプロセスを考案した。
研究チームは、いわゆる「希土類イオン添加ファイバ」でそれを作製している。簡単に言うと、ホロミウムの希土類イオンが注入されるのは石英ファイバを励起するレーザ光である。光学材料とデバイス部門長、Jas S. Sangheraによると、研究チームは新しいプロセスにより、85%の効率を達成した。
「ドーピングとは、希土類イオンをファイバコアに注入することである。そこで全てのアクションが起こる。この効率世界記録を生み出した方法がそれである。しかも、それは、われわれが高エネルギー、アイセーフレーザに必要としているものである」と同氏は説明している。
同部門のリサーチ化学者、Colin Bakerによると、レーザ発振プロセスは励起光源、つまり別のレーザに依存している。これが、希土類イオンを励起し、次にフォトンを放出して、所望の波長でレーザ発振する高品質の光を生成する。
Bakerによると、このプロセスには、ペナルティが存在する。「決して100%の効率ではない。注入するのは励起エネルギーであり、所望の波長の高品質光ではない。欲しいのは、特定波長の遙かに高品質の光出力であるが、レーザ光に変換されないで残るエネルギーが無駄になり、熱に変換される」と同氏は説明している。
エネルギーの損失は、究極的には出力増強や、レーザ光の品質を制約する、つまり効率が特に重要である。
ナノ粒子「ドーパント」の助けを借りて、研究チームは、2µmで動作するレーザで85%の効率レベルを達成することができる。この波長は、従来の1µmよりも「アイセーフ」であると考えられている。
Bakerによると、ナノ粒子添加は、シリカから希土類イオンを保護するというような、他のいくつかの問題も解決する。2µmでは、シリカのガラス構造は、希土類イオンからの光出力を低減することになる。ナノ粒子ドーピングは、希土類イオンを相互分離し、これが役立つ。イオンをコンパクトに圧迫することで光出力も低減できるからである。
(イッテルビウムドーパントを使う、1µm動作の従来のレーザは、Bakerによると、こうした要因に影響されることはない)
「ソリューションは、非常によくできた化学である。ホルミウムをルチア、酸化ランタン、フッ化ランタンのナノパウダーに溶かして、(希土類イオンに)適切な結晶環境を作る。このナノパウダーを合成するバケット化学を使う点が、コストダウンの決め手である」とSangheraは説明している。
ナノ粒子パウダーの粒子は、元はSangheraのチームが、以前のプロジェクトで合成したものである。これらは、一般に20nm以下である。
「さらに、われわれは、レーザ発振に適するように、これらのナノパウダーを石英ファイバに首尾良く大量に添加できなければならなかった」。
研究チームは、部屋いっぱいのサイズのガラス工芸旋盤で作業している。ここでは、最終的にファイバになるガラスがフッ化ガスで洗浄され、ブロートーチで型が作られ、ナノ粒子混合物が注入される、これは研究者が「ナノ粒子スラー」と呼ぶものである。結果は、希土類イオン添加、1インチ径、ガラスロッド、つまり「光プリフォーム」である。
隣室では、研究者がファイバ線引きシステムを使い、炉でプリフォームを軟化させ、長く伸ばして光ファイバにする。それを大きなスピンドルにスプールする。
研究チームは、すでにそのプロセスの特許を申請している。その新しいファイバレーザに想定されるアプリケーションには、ハイパワーレーザ、防衛や通信用の増幅器、溶接やレーザ切断などがある。
「基本的視点から、そのプロセス全体は商業的に実現可能である。粉末を作り、それをファイバに注入するのは、ローコストプロセスである。プロセスは、通信用ファイバ製造と非常によく似ている」と同氏は話している。