April, 21, 2015, Berkeley--米国エネルギー省(DOE)ローレンスバークリー国立研究所(LBL)とカリフォルニア大学バークリー校の研究グループは、自然の光合成プロセスを模倣する、半導体ナノワイヤとバクテリアのハイブリッドシステムを開発した。
この新しい人工光合成システムは、二酸化炭素と水を結合してアセテートを合成する。アセテートは、今日の生合成で最も一般的な構成要素。
「われわれのシステムは、化学産業と石油産業を根本的に変える可能性がある。化学物質と燃料を、地下から取り出すのではなく、完全に再生可能な方法で造り出すことができるからだ」とバークリー研究所材料科学部門の化学者、Peidong Yang氏はコメントしている。
バークリーの研究チームが開発した人工光合成技術は、捕捉した二酸化炭素(CO2)を活用することで、CO2貯蔵問題を解決する。
「自然の光合成では、葉が太陽エネルギーを集め、CO2は減少し、水と結合されてバイオマスを形成する分子生成物が合成される。われわれのシステムでは、ナノワイヤが太陽エネルギーを収集し、電子をバクテリアに供給すると、そこでCO2が減少し、水と結合してターゲットととした、様々な付加価値化学物質を合成する」とカーボンニュートラルエネルギー変換の専門家、Chris Chang氏は説明している。
生体適合光取込みナノワイヤアレイと、選択したバクテリア集団を組み合わせることで、新しい人工光合成システムは環境にとってウイン/ウインの状況を提供する。これは捕捉したCO2と太陽光を利用する環境に優しい化学。
このシステムは、Yangの研究グループが以前に開発した、シリコンと酸化チタンナノワイヤで構成されるナノワイヤヘテロ構造の「人工の森」から始まる。
Yang氏によると、この人工の森は緑色植物の葉緑体と同じである。「太陽光が吸収されると、太陽スペクトルの多様な領域の光を吸収し、シリコンと酸化チタンナノワイヤに光で励起された電子-ホールペアが生成する。シリコン内の光励起電子はバクテリアに送られてCO2が減少し、同時に酸化チタン内の光励起ホールが水分子を分離して酸素が生成される」。
一旦ナノワイヤアレイフォレストが確立すると、選択的に二酸化炭素還元触媒作用を及ぼすことで知られている酵素を生成する微生物個体群が増える。この研究では、バークリーチームは、嫌気性細菌、Sporomusa ovataを使った。この細菌は、周囲環境からすぐに電子を受け取り、それを二酸化炭素還元に利用する。
二酸化炭素がS. ovataによってアセテートに還元されると、遺伝子操作されたE. coliを使ってターゲットにした化学製品を合成する。化学製品の歩留まり向上のために、この研究ではS. ovataとE. coliを分離しておいた。
人工光合成システムの成功の決め手は、要件が厳しい光捕捉効率と触媒作用の分離、これはナノワイヤ/バクテリアハイブリッド技術によって可能になっている。このアプローチにより、バークリーチームは、1枚の葉とほぼ同等の模擬太陽光下、約200時間で太陽エネルギー変換効率、最大0.38%を達成した。
アセテートから生成されるターゲット化学分子の歩留まりも、ブタノールが26%、アモリファジエンが25%、再生可能、生物分解性プラスチックPHBが52%だった。
(詳細は、www.lbl.gov)