February, 25, 2015, Cambridge--MITなどの研究チームが開発を進めている新技術は、タンパク質の構造がどんなに複雑でも結晶化なしで、個々のタンパク質の詳細画像作り出せる見込みがある。
この技術は、制御された方法により実験室で誘発されるダイヤモンドの結晶構造内の微細欠陥を利用する。これらの欠陥、窒素欠陥(NV)は、窒素原子が結晶構造に導入されるときに生じ、完璧な間隔のダイヤモンド格子の1個の原子を置き換える。
そのような格子は、自然に生ずる欠陥を含むこともあり、これは格子の正常な場所に炭素原子が欠如している不完全性。窒素原子と欠陥がいっしょになると、それらがNV中心を形成する。NV中心は、特にスピン状態で、近接して存在する原子内の陽子や電子の位置および特性の検知に役立てることができる。
これは、ダイヤモンド表面にレーザを照射し、NV中心に蛍光発光させて行う。放出光を検出し解析することで近隣の粒子スピンを詳細に再現することができる。
MITの院生、Ashok Ajoy氏によると、ダイヤモンドのNV中心の利用は数年前に可能になったもので、今では多くのグループが量子コンピューテーションや量子通信などの用途にそれを利用しようとしている。NV中心がダイヤモンド表面近く、数nmの所にあるとき、表面の分子内の粒子のスピン状態感知にも使える。すると、個々の原子、その位置は原理的に、検出し位置づけることができ、それによって分子構造が明らかになる。
Ajoyは、生物分子をダイヤモンドの上に置いて、その構造を判断するという考えについて説明している。同氏によると、タンパク質では「構造と機能は密接に関係している」。したがって、その構造を正確に位置づけることができれば、基本的な生物学的プロセスがどのように働くか、また特定の分子標的と相互作用する新薬をどのように開発するかの理解に役立つ。
タンパク質の分子構造を解読する研究は主にX線結晶構造解析、透過型電子顕微鏡、核磁気共鳴を利用しているが、これらの方法は全て大量のサンプルを必要とする。例えば、X線解析は分子を結晶にまとめる必要がある、したがってこれらのいずれも個々の分子を調べるために使うことができない。このことは、そのような技術の適応性を著しく制限することになる。
さらに重要なことは、他の技術が特殊な条件、例えば極低温、真空などを必要とするのに対して、この新技術は「恐らく、室温、周囲環境条件で構造を見つけ出すことができる」と同氏は説明している。
これまでの所は、理論的な作業であるが、研究チームがすでに取りかかっている次のステップは、この技術をベースにして実際の画像を生成すること。「分子の実際の画像は、恐らくまだ数年先になる」と同氏は言っている。