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光を使って血圧をモニタ、ガン治療の進捗を追跡

December, 6, 2024, Boston--光が生きた細胞や組織とどのように相互作用するかを理解することは、ボストン大学(BU)のエンジニアDarren Roblyerの医療機器発明の基礎であり、健康を監視するまったく新しい方法を切り開くことができる。
ここでは、携帯電話のフラッシュライトをつけて、指先を小さな光線の上に置く。指は照らされているが、光は完全には通っていない。見ているのは、拡散性グローと呼ばれるもので、これは指を構成するすべての細胞と分子が一瞬で安定した光線を吸収して散乱するときに起こることである。

「光は何百万回も方向を変えて、拡散した赤い輝きに変わる」と、ボストン大学工学部の生物医学工学准教授、Darren Roblyerは説明している。
光が生きた細胞や組織とどのように相互作用するかを理解することは、同氏の研究の基礎。携帯電話のフラッシュライトを指に当てるほど簡単ではないかも知れないが、拡散光の原理は、健康状態を追跡するためのRoblyerの医療機器の発明の多くに当てはまる。
Biomedical Optical Technologies Labでは、同氏とそのチームは、光波を使用して、血圧、酸素レベル、疾患の進行などの生物学的プロセスを監視する方法をテストしている。たとえば、様々な波長の光が吸収、散乱したときにパターンを作成する方法を研究することで、Roblyerは人の血液中の代謝シグナルについて知ることができる。過去数年にわたり、同氏はカフで腕を絞らない血圧モニタリングデバイスを開発した。目標は、現在の、時には不快なオプションよりも正確な測定値を得ることである。

「この技術は、心臓が鼓動したときに何が起こるかの光学的効果を測定する」と、BUフォトニクスセンタのメンバーでもあるRoblyerは話している。
心臓が鼓動するたびに、血流は速くなったり遅くなったりすると同時に、動脈が拡張および収縮し、動脈内の血液量が増減する。「われわれはその両方を測定し、それらの波形から大量の情報を抽出し、それを使用して血圧を予測している。」

スペックルコントラスト光学分光法と呼ばれるこのデバイスは、可視光から近赤外光(NIR)まで、われわれの目で見える範囲をわずかに超えた複数の波長を使用して血圧を監視する。デバイスは指にクリップで留め、手首にストラップで固定する。チームの最新の結果(まだ正式には発表されていない)では、このデバイスが数週間にわたって30人の個人に対して非常に正確で連続的な血圧測定に成功していることが分かった。

Roblyerによると、現在の血圧計は、人為的ミスの余地を多く残している。同氏の技術を使って24時間にわたって15分ごとに血圧を測定し、その結果を平均化すると、診療所で1回だけ読むよりもはるかに正確であり、脳卒中、心臓発作、心血管疾患の予測に優れていると同氏指摘している。高血圧のリスクがある人のために、医師が持ち帰り用のモニターを処方して24時間かけて測定値を得るのはよくあることだが、「患者はそれを嫌がる。カフは一晩中、15分から30分ごとに外れるので、睡眠の妨げになる」(Roblyer)。

この問題が、同氏のチームにカフフリーのデバイスを作成する動機をさらに高めた。

光によるガン治療の追跡
Roblyerは、ガン細胞の代謝シグナルを読み取るために、光波の吸収と散乱を測定する同様のタイプの光学技術もテストしている。具体的には、ボストン・メディカル・センター(BMC)のBUチョバニアン・アンド・アベディシアン医学部の准教授、腫瘍内科医であるナオミ・コウ(Naomi Ko)とともに、乳がん腫瘍が化学療法や放射線治療にどの程度反応するかをモニタリングするための新しいツールの開発に取り組んでいる。BMCはBUの主要な教育病院である。

「乳ガンの治療選択肢が進歩しているにもかかわらず、化学療法に反応しない、または部分的にしか反応しない症例もある」(Roblyer)。マンモグラフィー、超音波、MRIなどの現在のモニタリングツールは、「腫瘍が反応するかどうかを判断するのに特に優れているわけではない」。
チームのデバイスが測定する指標(酸素化された赤血球と脱酸素化された赤血球の濃度と比率など)は、腫瘍が縮小する可能性があるかどうかを予測するために使用できる。医師は、乳ガン腫瘍を外科的に切除する前に治療を行うケースが増えているため、「腫瘍の反応をリアルタイムでモニタリングすることは、大きなメリットをもたらす可能性がある。治療中にガンがどれだけ縮小するかをリアルタイムで確認できれば、乳ガン患者に合わせた治療に役立つ可能性がある」(Ko)。

KoとRoblyerは、乳房組織上を移動するハンドヘルド超音波スキャナと同様の方法で操作するこのデバイスを臨床現場でテストしており、来年にかけてその有効性の分析を続ける予定である。最終的には、Roblyer は、患者が自宅で使用でき、予約を取らずに測定値を医師に送ることができるように、デバイスを小型化して持ち運び可能にしたいと考えている。

「これは非常に初期段階にある技術で、1960 年代の超音波と同等である。知識が蓄積されるにつれて、最終的にはデータを解釈し、医師や看護師が臨床上の決定を下すために使用できるようになる」(Roblyer)。

学習、実験、テストはもっとたくさんあるかも知れないが、可能性は膨大である。Roblyerのチームは、腎臓病治療のための透析を監視する技術など、他の一連の光学技術に取り組んでいる。また、強皮症(皮膚の炎症や線維化を引き起こす壊滅的な自己免疫疾患)の治療に特化したデバイスを作成する初期段階にあり、現在そのようなものは存在しないため、医師が薬が内部線維症を軽減しているかどうかを判断するのに役立つ。

「私が行っている最も重要なことの 1 つは、これらの技術を開発している中で、多くの医師と話をし、彼らの満たされていないニーズが何であるかを理解し、われわれの技術が役立つかどうかを理解するのを助けることだ。この仕事に対する私の願いは、患者の生活に真の影響を与えることである」と Roblyer は話している。