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高速OCTシステムを脳神経外科顕微鏡に統合

September, 30, 2024, Washington--リューベック大学研究チームは、メガヘルツ速度の光干渉断層撮影法(MHz-OCT)システムを市販の脳神経外科顕微鏡にうまく統合し、その臨床的有用性を実証した。この進歩は、脳手術中の腫瘍縁を特定するために使用できるOCT機器の開発に向けた重要な一歩を表している。

「われわれが開発したMHz-OCTシステムは非常に高速で、他のほとんどのOCTシステムよりも約20倍高速である。これにより、脳の表面下に到達する3D画像を作成することができる。これらをAIなどで処理して、健康ではなく、さらに治療が必要な部分を見つけて表示することができるが、他のイメージング方法では隠されたままである」とリューベック大学のWolfgang Draxingerは話している。

Optica Publishing GroupのジャーナルBiomedical Optics Expressでは、Robert Huberをリーダーとする研究者が、顕微鏡統合MHz-OCTシステムの臨床研究の結果について説明している。チームは、このシステムを外科的処置中に使用して、高品質のボルメトリックOCT断面スキャンを数秒で取得し、画像をすぐに後処理に利用できることを示した。

「われわれの顕微鏡統合MHz-OCTシステムは、脳腫瘍手術だけでなく、脳を囲む厚い膜を通じて血管などの解剖学的構造の高コントラスト画像を取得できるため、あらゆる脳神経外科の現場でツールとして使用されている」と、新しい論文の筆頭著者、Draxingerはコメントしている。「これにより、パーキンソン病の脳深部刺激療法など、脳の表面下の解剖学的構造に関する詳細な情報を必要とする手順の結果が大幅に改善される可能性がある。」

OCTの高速化
研究チームは、使用する光源やセンサを改良し、生成される大量のデータを処理するソフトウェアを開発することで、OCT技術の高速化に取り組んできた。その結果、毎秒100万回以上の深度スキャンを実現できるMHz-OCTシステムが開発された。

メガヘルツ速度により、わずか1秒で100万を超える深度スキャンを取得できる。このイメージング速度が可能なのは、そのシステムにフーリエドメインモードロッキングレーザが組み込まれているためである。これは、2005年にMIT、Eric Swanson および David HuangとともにOCTを発明したJames G. Fujimotoの下でHuberが博士論文研究中に初めて考案したものである。さらに、過去15年間にわたるグラフィックスプロセッシングユニット(GPU)技術の開発により、生のOCT信号をかさばるコンピュータなしで読み取り可能なビジュアルに処理するために必要な計算能力が実現された。

開発されたMHz-OCT機器により脳腫瘍の縁を見るために使用できるかどうかを調べるために、チームはそれを外科医が脳をよりよく見るために使用する特別なタイプの顕微鏡と統合した。

手術室へ持ち込む
統合システムを構築した後、キャリブレーションターゲットと組織アナログファントムを使用してテストした。これらの結果に満足すると、チームは患者の安全性試験を進め、その後、30人の患者の脳腫瘍切除脳神経外科への適用を調査する臨床研究を開始した。

「われわれのシステムは、手術室の通常のワークフローとうまく統合され、大きな技術的問題はないことがわかった。取得した画像の品質は、システムが後付けであるために低く設定されていたわれわれの期待を上回った」(Draxinger)。

臨床試験中、研究チームは、約10TBのOCTイメージングデータと、対応する病理学的組織学情報を取得した。チームによると、新しいシステムが生成しているデータと画像を理解し、組織を分類するためのAI手法を開発するのは、まだ非常に初期段階にある。したがって、この技術が脳腫瘍切除脳神経外科手術をサポートするために広く使用されるようになるまでには、おそらく何年もかかりそうである。

研究チームまた、脳神経外科手術中に、たとえば外部刺激に反応する脳活動の正確な位置を示すために新しいシステムを使用する研究を準備している。これにより、神経補綴電極の埋め込み精度が向上し、脳の電気信号を利用して補綴デバイスをより正確に制御できるようになると期待されている。