一般的な食品染料を使いマウスの皮膚を透明にする

September, 18, 2024, Stanford--見事な実験で、スタンフォード大学の研究者は一般的な光吸収分子を適用するだけで、生きたマウスの皮膚から内臓までを見ることができた。
体の中で起こっていることを見るのは決して簡単ではない。CTスキャン、X線、MRIs、顕微鏡などの技術で洞察を得ることができるが、画像が完全に鮮明になることはめったになく、放射線被曝などの副作用を伴う可能性がある。

しかし、保湿クリームのように皮膚に物質を塗り、組織を傷つけずに透明にできるとしたらどうか。

これは、スタンフォード大学の科学者が、同様の効果を示す他のいくつかの光吸収分子の中でも、食品に一般的に見られるFDA承認の染料を使用して行ったことである。Science誌に掲載されたこの研究は、実験室でマウスの皮膚に染料溶液をこすりつけることで、研究者が切開せずに肉眼で皮膚から内臓までを見ることができた方法を詳しく説明している。さらに、透明性が起こったのと同じくらい簡単に、それを元に戻すことができる。

「水で皮膚をすすぎ、マッサージするとすぐに、効果は数分以内に逆転した。これは驚くべき結果だ」と、材料科学および工学の助教授、論文の上級著者、Guosong Hongは説明している。

吸収により光の散乱を低減
光波が皮膚に当たると、組織がそれらを散乱させ、目にはくすみ不透明に見える。この散乱効果は、水や脂質などの様々な組織成分の屈折率の違いから生じる。通常、水は可視スペクトルの脂質よりもはるかに屈折率が低く、可視光線は両方を含む組織を通過するときに散乱する。

様々な組織成分の屈折率を一致させるために、チームは鎮静剤を投与したマウスの腹部、頭皮、後肢に赤いタルトラジン(食用色素FD&C Yellow5としても知られる)の溶液をマッサージした。皮膚の色が赤くなったのは、この光吸収分子の存在により、青色光の多くが吸収されたことを示している。この吸収の増加により、水の屈折率が異なる波長(この場合は赤)で変化しました。染料の吸収の結果として、水の屈折率は赤色スペクトルの脂質の屈折率と一致するため、散乱が減少し、赤色の波長で皮膚がより透明に見えるようになる。

この研究は、Kramers-Kronig関係と呼ばれる、吸収と屈折率の関係を記述できる数十年前の方程式の新しいアプリケーションである。この食用色素以外にも、いくつかの光吸収分子が同様の効果を示しており、この現象の背後にある基礎となる物理学の一般化可能性が確認されている。

研究者たちは、特別な機器を使わずに、肝臓、小腸、盲腸、膀胱などの機能している内臓を見ることができた。また、脳内の血流や四肢の筋線維の微細構造を可視化することもできた。マウスの鼓動する心臓と活発な呼吸器系は、生きた動物で透明性が成功裏に達成されたことを示した。さらに、染料は被験者の皮膚を恒久的に変化させるわけではなく、染料を水ですすぐとすぐに透明度が消えた。

研究者たちは、これがマウスの生きた内臓の可視性を達成するための最初の非侵襲的アプローチであると考えている。

「スタンフォード大学は、材料科学、神経科学、生物学、応用物理学、光学の専門家が集まるこのような多面的なプロジェクトに最適な場所である。それぞれの分野には、独自の言語がある。Guosongと私は、神経科学とナノフォトニクスに関するお互いのコースを受講して、すべてのエキサイティングな機会をよりよく理解することを楽しんだ」と、材料科学および工学の教授、論文の共著者、Mark Brongersmaはコメントしている。

「クリア」組織の潜在的な未来
現在、この研究は動物でのみ行われている。Hongによると、同じ技術を人間にも応用できれば、生物学的、診断的、さらには美容的なさまざまな利点を提供できる。

たとえば、侵襲的な生検を経る代わりに、メラノーマ検査は、人の組織を切除せずに直接観察することで行うことができる。このアプローチは、一部のX線やCTスキャンに取って代わる可能性もあり、採血者が静脈を簡単に見つけるのを助けることで採血の痛みを軽減することもできる。また、顔料が皮膚の下にある場所にレーザビームを正確に集束させるのを助けることにより、レーザータトゥー除去などのサービスを改善することもできる。

「これは医療に影響を与え、人々が侵襲的な種類の検査を受けるのを防ぐ可能性がある。皮膚に切り込んだり、あまりはっきりとは見えないが放射線を利用するのではなく、皮膚の下で何が起こっているのかを見ることができれば、人体の見方を変えることができるで」とHongはコメントしている。