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光は細胞を標的にして死に至らしめ、レーザ精度で免疫反応を誘発

July, 29, 2024, Champaign--光を使って厄介な細胞を正確に標的とする新しい方法は、ガンや炎症性疾患の新たな理解と治療法を解き放つ可能性があると、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(University of Illinois Urbana-Champaign)の研究者が報告している。

ネクロプトーシスとして知られる炎症性細胞死は、病気に対する体の武器庫における重要な調節ツールである。ただし、一部の病気では、プロセスが狂う可能性がある。たとえば、ガン細胞は炎症シグナルを抑制することができるため、死を免れる。

「通常、ガンの治療では薬理学的誘導によって細胞を死滅させるが、これらの化学物質は組織全体に拡散する傾向があり、正確な位置に封じ込めることは困難である。多くの望ましくない影響が生じる」と、研究リーダーのカイ・チャン(Kai Zhang)教授(カリフォルニア大学生化学教授)は言い、「細胞を光に反応させ、光線を1つの細胞よりも小さく集束させることができる。このようにして、光を使って細胞を非常に正確に標的にし、その死の経路をオンにすることができる」と続けている。

研究者たちは、オプトジェネティクスと呼ばれる方法を使用して、細胞を光に反応させる。チームは、植物から光活性化遺伝子を借りて腸管細胞培養に挿入し、ネクロプトーシスを調節するタンパク質であるRIPK3の遺伝子に結合させた。

「活性化されると、RIPK3はオリゴマ化を起こし、タンパク質複合体のクラスタを形成する。われわれの光感受性タンパク質は、青色光にさらされるとクラスタ化する。したがって、光感受性タンパク質が一緒になるトリガーによって、RIPK3が一緒になり、オリゴマ化され、それが活性化経路を模倣する方法である」と、Journal of Molecular Biologyに掲載された論文の筆頭著者、大学院生Teak-Jung Ohは話している。

しかし、細胞自体を殺すことだけが目的ではない。機械的または化学的に細胞を完全に殺すのではなく、炎症性細胞死経路を誘導することで、免疫系が反応するようになる。破裂した細胞はサイトカインと呼ばれる化学物質を放出し、近くの細胞を刺激し、免疫系が脅威を識別して攻撃する方法に重要な役割を果たす白血球であるT細胞を引き付ける、とZhangは説明している。

「ある種のガン細胞は局所的な免疫抑制環境を作り出す。そこでは、T細胞が動員されないか、あるいはT細胞が来ても、それを脅威として認識せず、ガン領域に浸潤しない。しかし、ネクロプトーシスによって一部のガン細胞を開放することで、この免疫抑制環境を調節し、T細胞がガンを認識して攻撃するように訓練するのに役立つことを期待している」と、イリノイ州ガンセンタメンバーであるZhangは話している。

光遺伝学的システムは、組織に直接光を送達する必要があるため、皮膚よりも深い組織でのヒトの臨床応用は現在のところ限られている。しかし、イリノイ州のグループは、癌やその他の炎症性疾患におけるネクロプトーシスと免疫応答をさらに研究するために、マウスにシステムを実装することを計画している。また、免疫療法のためのT細胞のトレーニングのためのin vitroプラットフォームの可能性をさらに調査する。

「ネクロプトーシスの細胞シグナル伝達経路を理解することは、神経変性疾患や炎症性腸疾患などの疾患に関与していることが知られているため、特に重要だ。ネクロプトーシスがこれらの疾患の進行にどのように影響するかを知ることは重要である。また、分子メカニズムを知らなければ、進行を遅らせるために何を標的にすればよいのかもわかない」とOhはコメントしている。