Science/Research 詳細

ガン組織近くで使える高エネルギー電子線をレーザで発生

April, 3, 2024, 東京--量子科学技術研究開発機構(QST)量子技術基盤研究部門関西光量子科学研究所の森道昭上席研究員らの研究グループは、米国のカリフォルニア大学アーバイン校、カナダのウォータールー大学と共同で、細孔が多数開いたガラス板(マイクロチャンネルプレート)へのレーザ光照射により、放射線の一種である、高エネルギー電子線が発生することを実証した。
この技術を利用すれば、内視鏡型放射線(電子線)発生装置が実現可能であり、被ばく線量を低減し、かつ遮蔽が不要な放射線ガン治療技術の確立を見通すことができるようになる。
放射線によるガン治療は、体に負担となる外科的手術を伴わないためQOL(Quality of Life)の高い治療として注目されている。放射線を身体外部から照射する方法や、カテーテルなどで放射線源を体内の患部近くまで持ち込んで照射する方法などがあるが、いずれの方法でも放射線を患部に届けるまでの被ばくは避けられない。また、加速器運転に伴う放射線発生や放射線源の取り扱いなどに留意する必要があり、装置価格の抑制や運用コストの低減も求められる。
今回の実験では、パルスレーザをマイクロチャンネルプレートに照射すれば、ガン治療が可能な数百キロ電子ボルトレベルの高エネルギー電子線 が発生することを確認した。従って、光ファイバ先端に微小なマイクロチャンネルプレートを固定した装置を作製し、内視鏡と組み合わせて利用することができれば、体内のガン組織に近接した場所で高エネルギー電子線を発生させ、放射線治療ができることになる。この技術では被ばく線量の低減が可能であり、また放射線遮蔽設備が不要な放射線ガン治療技術の確立につながる。
研究成果はAmerican Institute of Physicsが発刊するオープンアクセス誌『AIP Advances』に2024年3月28日(木)(米国時間)に掲載された。
(詳細は、https://www.qst.go.jp