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光熱ニューロモデュレーションが嗅覚を高める

February, 16, 2024, St. Louis--技術革新は、多くの場合、既存の生物学的システムに触発される。結局のところ、進化は特定の機能を完成させるために何百万年もの試行錯誤をしてきたのである。
昆虫は、地球上で最も成功した生物の1つであるが、その理由の一つは、その多様な適応力が、そのような擬態の有用な対象となっているからである。蝶の翅の観察はフォトニック構造の作成に使用され、蚊の口吻の研究は痛みのないマイクロニードルにつながった。

嗅覚システムの模倣は、生物診断、国土安全保障、環境モニタリング、産業プロセス制御に役立つ可能性があるが、既存の化学センサの限界のために、一層の困難が証明されている。

今回、米国St. Louisのワシントン大学の研究チームは、ハイブリッドアプローチを用いて、これまで実物のような感度、安定性、特異性、耐性を欠いていた効果的な「e-nose」、つまり人工化学センシングシステムの開発という課題を克服したと報告している(Nat. Nanotechnol., doi: 10.1038/s41565-023-01592-z).バッタを被験者として用いることで、特別に設計されたナノ構造の光熱特性と化学的貯蔵能力を利用して、昆虫の匂い誘発反応を高め、匂いの識別を向上させることができたと報告している。

ニューロモデュレーションの2つの方法
人間が操作する電子鼻(e-nose)を作る取組は不十分だったため、Prashant Gupta と Barani Ramanが率いるチームは、実際の生物学的システムを利用することに決め、その大きさからバッタを選んだ。「蒸気状化学物質に関する情報を電気的な神経信号に変換するという困難な仕事は、生物学に任せている」と、Ramanはプレスリリースでコメントしている。「これらの信号は昆虫の触角で検出され、脳に伝達される。脳に電極を埋め込み、匂いに対するバッタの神経反応を測定し、それをフィンガープリントとして化学物質を区別することができる」

とは言え、この技術は、昆虫の脳に配置できる電極の数と、配置できる場所によって制限される。有用な読み出しを得るためには、研究チームは電極アレイによって生成された部分的な信号を増幅する必要がある。

研究チームは、バッタの嗅覚を増強するために2つの方法を利用した。まず、生体適合性で生分解性のメソポーラスシリカ被覆ポリドーパミンナノ粒子を作製し、光熱ニューロモデュレーション(光入力(この場合は近赤外レーザからの照明)を神経摂動に変換する光熱ナノトランスデューサとして使用した。「ナノ構造から発生する熱を利用して、ナノヒータなどの局所的な加熱を行い、神経活動を高めるというアイデアである」(Raman)。

次に、この光熱調節と連動して、研究チームはナノ粒子を、嗅覚を一層高めることができるオクトパミンと呼ばれる神経調節物質のカーゴキャリアとして使用した。チームは、ナノ粒子をテトラデカノールと呼ばれる相変化材料に封入し、光学的または熱刺激を加えることで、必要に応じてオクトパミンの局所的な放出を引き起こすことを可能にした。

爆弾探知サイボーグバッタ
研究チームは、カスタム設計の嗅覚計を介してバッタを様々な匂いに曝露し、デュアルニューロモデュレーション法により、個々のニューロンの匂い誘発応答と匂い予測精度が大幅に向上することを発見した。これらの改良は、爆発性蒸気の感知にバイオハイブリッド昆虫ベースのe-noseを使用する可能性を実証した以前の研究をベースにしている。

「われわれが開発したナノ対応のニューロモデュレーション戦略は、テーラードサイボーグ化学センシングアプローチを実現するための新しい機会を開く。このアプローチは、単に情報を読み取るだけの受動的なアプローチから、情報処理の基盤となる神経回路の能力をフルに活用する能動的なアプローチに変えるものである」と、研究室の大学院生で論文の筆頭著者Prashant Guptaはプレスリリースで説明している。