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自己発熱マイクロ流体デバイスを3Dプリント

January, 12, 2024, Cambridge--マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、3Dプリンティングを使用して自己発熱型マイクロ流体デバイスを製造し、いずれ、多くの疾患を検出するための安価で正確なツールを迅速に作成するために使用できる技術を実証した。

マイクロ流体デバイスは、液体を操作して化学反応を促進する小型化された機械であり、血液や体液の小さなサンプル中の病気を検出するために使用できる。例えば、Covid-19の家庭用検査キットには、シンプルなタイプのマイクロ流体が組み込まれている。

しかし、多くのマイクロ流体アプリケーションでは、特定の温度で実行する必要がある化学反応が必要になる。通常、クリーンルームで製造されるこれらのより複雑なマイクロ流体デバイスには、スケールアップが困難な複雑で高価な製造プロセスを使用して、金またはプラチナ製の発熱体が装備されている。

その代わりに、MITチームはマルチマテリアル3Dプリンティングを使用して、単一の安価な製造プロセスを通じて、発熱体を内蔵した自己発熱マイクロ流体デバイスを作成した。チームは、小さな機械内部の微細なチャネルを流れる流体を特定の温度に加熱できるデバイスを開発したのである。

その手法はカスタマイズ可能であるため、エンジニアは、デバイスの特定の領域内で流体を特定の温度または特定の加熱プロファイルに加熱するマイクロ流体を作成できる。低コストの製造プロセスでは、すぐに使用できるマイクロ流体を生成するために約2ドルの材料が必要になる。

このプロセスは、臨床医が多くの診断手順に必要な高価なラボ機器にアクセスできない可能性のある発展途上国の遠隔地で、自己発熱マイクロ流体デバイスを作成するのに特に役立つ可能性がある。

「特にクリーンルームは、通常、これらのデバイスを製造する場所であり、建設と運用に途方もない費用がかかる。しかし、AMを使えば、従来の方法よりもはるかに速くより安価に、非常に高性能な自己発熱型マイクロ流体デバイスを製造することができる。これはまさに、この技術を普及させる方法である」とMITのマイクロシステム技術研究所(MTL)の主任科学者、製造技術に関する論文の主任著者Luis Fernando Velásquez-Garcíaは話している。

同氏の論文の筆頭著者は、Jorge Cañada Pérez-Sala(電気工学およびコンピュータサイエンスの大学院生)である。この研究成果は、PowerMEMS Conferenceで発表された。

絶縁体が導電性になる
この新しい製造プロセスでは、マルチマテリアル押出3Dプリンティングと呼ばれる技術が利用されており、プリンターの多数のノズルから複数の材料を噴射して、デバイスを層ごとに構築できる。このプロセスはモノリシックであるため、3Dプリンターでデバイス全体をワンステップで製造でき、後組み立ては不要である。

自己発熱するマイクロフ流体を作製するために、研究チームは、3Dプリンティングで一般的に使用されるポリ乳酸(PLA)として知られる生分解性ポリマーと、PLAの改良版の2つの材料を使用した。

改質されたPLAは、銅ナノ粒子をポリマーに混合し、この絶縁材料を導電体に変換するとVelásquez-Garcíaは説明している。この銅ドープPLAで構成された抵抗器に電流を流すと、エネルギーが熱として放散される。

「PLA材料は誘電体だが、このナノ粒子の不純物を入れると、物性が一変する。これはまだ完全には理解できていないが、実際に起こることであり、再現可能だ」。

研究チームは、マルチマテリアル3Dプリンターを使用して、銅ドープPLAから加熱抵抗器を作製し、1回のプリントステップで、流体が流れる微細なチャネルを備えたマイクロ流体デバイスを真上にプリントする。部品は同じ基材で作られているため、プリント温度が似ており互換性がある。

抵抗器から放散される熱は、マイクロ流体のチャネルを流れる流体を暖める。

抵抗器とマイクロ流体に加えて、プリンターを使用して、それらの間に挟まれるPLAの薄くて連続した層を追加する。この層は、抵抗器からマイクロ流体に熱が伝わる程度に薄くなければならないが、流体が抵抗器に漏れるほど薄くしてはならないため、製造は特に難しい。

出来上がったマシーンは、USクオーター(25セント硬貨)の1/4ほどの大きさで、数分で製造できる。幅約500µm、高さ約400µmのチャネルをマイクロ流体に通すことで、流体を運び、化学反応を促進する。

重要なのは、PLA材料が半透明であるため、デバイス内の液体が見えるままであること。Velásquez-Garcíaの説明によると、多くのプロセスは、化学反応中に何が起こっているかを推測するために、視覚化や光の使用に依存している。

カスタマイズ可能なケミカルリアクタ
研究チームは、このワンステップ製造プロセスを使用して、入力と出力の間を流れる流体を4℃に加熱できるプロトタイプを生成した。このカスタマイズ可能な技術により、特定のパターンまたは特定の勾配に沿って流体を加熱するデバイスを作成できる可能性がある。

「この2つの材料を使って、まさに思い通りの化学反応器を作ることができる。マイクロ流体のすべての機能を維持しながら、特定の加熱プロファイルが設定可能である」。

ただし、PLAは分解が始まる前に約50℃までしか加熱できないという事実から1つの制限がある。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査に使用される化学反応など、多くの化学反応には90℃以上の温度が必要。また、デバイスの温度を正確に制御するには、温度センシングを可能にする第3の材料を組み込む必要がある。

Velásquez-Garcíaは、今後の研究でこれらの制限に取り組むことに加えて、マイクロ流体デバイスに直接磁石を印刷したいと考えている。これらの磁石は、粒子の選別や整列を必要とする化学反応を引き起こす可能性がある。

同時に、同氏のチームは、より高い温度に達する可能性のある他の材料の使用を模索している。また、PLAを研究して、ポリマーに特定の不純物を添加するとPLAが導電性になる理由もよく分かっている。

「PLAの電気伝導率に関連するメカニズムを理解できれば、これらのデバイスの能力は大幅に向上するが、他の工学的問題よりもはるかに解決が難しくなる」。

「流体チャネルと電気的特徴を同時に備えたマイクロ流体チップを直接プリントできることは、バイオマーカーの増幅や液体の作動・混合など、生体サンプルを処理する際に非常に画期的なアプリケーションを開く。また、PLAは時間の経過につれて分解されるため、チップが時間の経過とともに溶解して吸収する埋め込み型アプリケーションも考えられる」と、スウェーデンのKTH王立工科大学(KTH Royal Institute of Technology)准教授Niclas Roxhedは付け加えている。