November, 28, 2014, Singapore--南洋理工大学(Nanyang Technological University)は、2つの画期的な機能を持つ前例のないバイオマーカー(生体指標)を発表した。
まず、このバイオマーカーは、腫瘍細胞を検出すると発光して研究者が見やすくなるようにする。同時に、特定の細胞に対して抗ガン剤を放出する。
同大学によると、この新しいバイオマーカーはナノ蛍光体粒子でできており、薬剤開発に無限の可能性を持つ。
南洋理工大学(NTU)准教授、Zhang Qichun氏とJoachim Loo氏は、イメージングデバイスで近赤外光を発してナノ粒子を活性化するとナノ粒子が光る方法を見いだした。これは、腫瘍細胞が小さなシグナリング分子を放出する場合だけに起こる。
Zhang教授によると、ほとんどのイメージング技術はUVか可視光を使用するので、近赤外光の利用は独自の方式である。
「近赤外光は、皮膚から3~4㎝深い組織に届く。これは可視光よりも遙かに深い。また、UVや可視光のように、健全な細胞に損傷を与えない」と材料専門家の同教授はコメントしている。
また、Loo教授によると、この新しいバイオマーカーは、ナノ粒子の外側に薬剤を込めたコーティング層を作ることによって抗ガン剤を放出できるようにすることも可能。薬剤は、バイオマーカーが近赤外光に反応して光るときに放出される。
新しいバイオマーカーには、他にも利点がある。従来の染料よりもコントラストが2倍優れており、3つの異なる色の光を出せる。言い換えると、健全な細胞と腫瘍細胞との区別がより鮮明になると言うことである。
量子ドットなど、イメージングに使用する他の新しいバイオマーカーと異なり、NTUのバイオマーカーは毒性が無く、身体に害を及ぼすことなく排出するまで最大2日体内にとどまることができる。
NTUの材料科学・工学部の研究チームは、このバイオマーカーに複数の薬剤層を作ろうと考えている。これが成功すれば、医師は2つあるいはそれ以上の薬剤をバイオマーカーを通じて連続的に放出することができるようになる。これは、副作用が少なくなるので、癌患者にとってはメリットがある。小容量の操作ができ、バイオマーカーが正確に腫瘍細胞を標的にできるので効率が高くなるからである、と研究チームは説明している。