November, 14, 2023, Houston--ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)のこれまでの研究では、アルツハイマー病などの慢性神経変性疾患に真菌が関与していることが示唆されているが、これらの一般的な微生物がこうした疾患の発症にどのように関与しているかについては、あまり理解されていない。
動物モデルを使用して、ベイラー医科大学と共同研究機関の研究者は、真菌カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が脳に入り、そのクリアランスを促進する脳細胞の2つの個別メカニズムを活性化し、アルツハイマー病発症の理解に重要で、アミロイドベータ(Ab)様ペプチド、アミロイド前駆体タンパク質からの有毒なタンパク質断片を生成することを発見した。この研究成果は、学術誌「Cell Reports」に掲載された。
「われわれの研究室は真菌の研究に長年の経験があるため、動物モデルにおけるC.アルビカンスとアルツハイマー病の関係の研究に着手した」と、責任著者、Fulbright Endowed Chair、ベイラー大学の病理学および免疫学および医学の教授、Dr. David Corry,はコメントしている。同教授はまた、ベイラーのDan L Duncan Comprehensive Cancer Centerのメンバーでもある。「2019年、C.アルビカンスが脳に入り込み、アルツハイマー病で見られるものと非常によく似た変化を引き起こすことを報告した。今回の研究は、その研究を拡張して、分子メカニズムを解明するものである」
「われわれの最初の疑問は、C. albicansがどのようにして脳に入るのかということだった。C.アルビカンスは、分泌型アスパラギン酸プロテアーゼ(Saps)と呼ばれる酵素を産生し、血液脳関門を破壊し、真菌が脳にアクセスして損傷を引き起こすことを発見した」と、筆頭著者でCorry研究室に勤務する小児科ポスドク科学者Yifan Wu博士は説明している。
次に、研究チームは、真菌はどのようにして脳から効果的に除去されるのかを問うた。Corryと同氏のチームは以前、C.アルビカンスの脳感染症が10日後に健康なマウスで完全に解消されることを示していた。この研究では、ミクログリアと呼ばれる脳細胞の真菌によって引き起こされる2つのメカニズムにより、これが起こることを報告した。
「真菌が血液脳関門を破るのに使うのと同じSapsが、アミロイド前駆体タンパク質をAb様ペプチドに分解する。これらのペプチドは、Toll様受容体4と呼ばれる細胞表面受容体を介してミクログリア脳細胞を活性化する。これは、脳内の真菌負荷を低く保っが、感染を除去するものではない」とWuは説明している。
C. albicansは、カンジダリシンと呼ばれるタンパク質も産生し、このタンパク質は別の受容体であるCD11bを介してミクログリアに結合する。「この経路を取り除くと、真菌は脳内で効果的に除去されなくなる」(Wu)。
「この研究は、アルツハイマー病の発症に関するパズルの重要な新しいピースに寄与する可能性がある」とCorry氏は述べています。この状態の現在の説明は、神経変性につながる有毒なAb様ペプチドが脳内に蓄積した結果であるというもの。これらのペプチドは内因性に産生され、われわれ自身の脳プロテアーゼがアミロイド前駆体タンパク質を分解し、有毒なAbペプチドを生成するというのが支配的な考え方である」(Corry)。
ここでは、研究チームは、Ab様ペプチドが別の供給源であるC.アルビカンスからも生成できることを示している。アルツハイマー病やその他の慢性神経変性疾患を持つ人々の脳で検出されているこの一般的な真菌は、脳が内因性に生成できるのと同じAb様ペプチドを生成できる独自のプロテアーゼセットを持っている。
「アルツハイマー病、パーキンソン病など、複数のカンジダ関連神経変性疾患を特徴づける脳内アブペプチド凝集体は、脳とC.アルビカンスの両方によって本質的に生成される可能性があることを提案している。動物モデルにおけるこれらの知見は、ヒトのアルツハイマー病の発症におけるC.アルビカンスの役割を評価するためのさらなる研究の実施を支持しており、革新的な治療戦略につながる可能性がある」とCorryは話している。