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細胞など柔らかな構造物の3Dバイオプリント新手法

October, 23, 2023, 大阪--大阪大学大学院基礎工学研究科の境慎司教授、大学院生の粉谷聖(博士前期課程)は、広島大学学術・社会連携室オープンイノベーション本部の花之内健仁教授との共同研究で、動物細胞を含んだ柔らかなゼリー状の三次元構造物を、3Dプリンタを用い、その内部へのプリント補助剤の混入を抑えて精度よくバイオプリントする方法の開発に成功した。

3Dバイオプリンティングは、デジタルデータをもとに、生きた細胞を含む溶液をインクとして利用し、立体的な細胞含有構造物を精密にプリントする革新的な技術。この技術は、将来的に機能不全の組織や臓器の代替物の作製を可能にし、特に医療分野において大きな期待が寄せられている。

従来のバイオプリンティング技術では、柔らかな構造物の造形は困難であり、細胞の成長と組織化においても問題が多く存在していた。具体的には、粘度の低いインクが造形中に流出、または印刷中に自重によって変形する等の問題があった。また、最近検討が増えているプリント補助剤を満たした容器内にインクを押し出して固化させる方法では、プリント補助剤が構造物中に多く含まれことが不可避になるという問題があった。

研究グループは、細胞を含むインクとプリント補助剤を交互に積層するとともに、補助剤からインクを固化させる成分を供給してインクを固めながら3D印刷する方法を開発した。この技術では、インクが固まるのはプリント補助剤と接触した時のみである。さらに、プリント補助剤としてエコー検査用ゼリーを利用することで、造形後にプリント補助剤を洗浄・除去することも容易になった。

この研究によって、動物細胞を生きたまま含む柔らかな立体構造物を、混入物は少なく精度よく3Dプリントすることが可能となった。これにより、人の肝臓由来の細胞が構造体内部で成長することも確認された。この新たなバイオプリンティング方法は、機能的な臓器や組織の3Dプリントの実現に寄与するものとして期待される。

研究成果は、米国化学会が発行する学術誌「ACS Biomaterials Science & Engineering」に、2023年9月26日に公開された。