ウエアラブル超音波スキャナ、乳ガンを早期発見

September, 6, 2023, Cabmbridge--ブラに組み込むことができる新しいデバイスは、乳ガンのリスクが高い患者をより頻繁に監視できる可能性がある。
乳ガンが初期段階で診断された場合、生存率はほぼ100%。しかし、後の段階で検出された腫瘍の場合、その割合は約25%に低下する。

乳ガン患者の全生存率を改善することを期待して、MITの研究者は、人々がまだ初期段階にあるときに腫瘍を検出できるウェアラブル超音波デバイスを設計した。特に、定期的なマンモグラムの合間に乳ガンを発症するリスクが高い患者にとって価値がある可能性がある。

このデバイスは、ブラに取り付けることができる柔軟なパッチであり、着用者はパッチに沿って超音波トラッカーを動かし、さまざまな角度から乳房組織を画像化することができる。新しい研究では、研究者らは、医用画像センタで使用される超音波プローブに匹敵する解像度の超音波画像を取得できることを示した。

「超音波技術のフォームファクタを変更して、家庭で使用できるようにした。ポータブルで使いやすく、乳房組織のリアルタイムでユーザーフレンドリーなモニタリングを提供する」と、MITのメディアラボの准教授、この研究のシニア著者であるCanan Dagdevirenはコメントしている。

MIT大学院生、Wenya Du、Research Scientist Lin Zhang、Emma Suh ’23、および西安理工大学(Xi’an Technological University)、Dabin Lin教授が、Science Advancesに掲載された論文の筆頭著者。

ウェアラブル診断
このプロジェクトでは、Dagdevirenは、亡き叔母Fatma Caliskanogluからインスピレーションを得た。叔母は、定期的なガン検診を受けていたにもかかわらず、49歳で末期乳ガンと診断され、6ヶ月後に亡くなった。当時MITのポスドクだったDagdevirenは、叔母のベッドサイドで、ブラに組み込むことができ、乳ガンリスクが高い個人がより頻繁にスクリーニングできる診断装置の大まかな概略図を作成した。

定期的にスケジュールされたマンモグラムの間に発生する乳房腫瘍(インターバルガンとして知られている)は、すべての乳ガン症例の20〜30%を占め、これらの腫瘍は、傾向として、定期的なスキャン中に見られるものよりも侵攻性である。

「目標は、インターバルガンを発症する可能性が最も高い人々をターゲットにすること。より頻繁なスクリーニングにより、生存率を最大98%に高めることを目標としている」と、身体に適合するウェアラブル電子機器の開発を専門とする研究グループのDagdevirenは言う。。

診断用ブラのビジョンを実現するために、Dagdevirenは、ユーザーがいつでもイメージングを実行できる小型の超音波スキャナを設計した。このスキャナは、医用画像センタで使用されているのと同じ種類の超音波技術をベースにしているが、新しい圧電材料を組み込んでおり、これによって研究チームは超音波スキャナを小型化することができた。

デバイスをウェアラブルにするために、研究者チームは、ハニカムのような開口部を備えた柔軟な3Dプリントパッチを設計した。磁石を使用することで、このパッチは、超音波スキャナが皮膚に接触できるようにする開口部を備えたブラに取り付けられる。超音波スキャナは、6つの異なる位置に移動できる小さなトラッカー内に収まり、乳房全体を画像化することができる。スキャナを回転させて様々な角度から画像を撮ることもでき、操作に特別な専門知識は必要ない。

「この技術は、乳ガンの検出と早期診断に基本的な機能を提供し、これはプラスの結果のキーとなる」とAnantha Chandrakasanは話している。同氏は、MIT工学部の学部長、電気工学アンドコンピュータサイエンスのVannevar Bush教授、研究の著者の1人。「この研究は、材料、低電力回路、AIアルゴリズム、および生物医学システムの進歩を活用して、超音波研究と医療機器の設計を大幅に前進させる」。

早期発見
MIT臨床移転研究センタと協力して、研究チームは、乳房嚢胞の病歴を持つ71歳の女性である1人の被験者でデバイスをテストした。新しい装置を使用して、研究者らは直径0.3㎝(初期段階の腫瘍のサイズ)の嚢胞を検出することができた。チームはまた、この装置が従来の超音波に匹敵する解像度を達成し、組織を最大8㎝の深さで画像化できることを示した。

「質の高い手頃な価格の医療へのアクセスは、早期発見と診断に不可欠である。ナースとして、私は診断の遅れの否定的な結果を目撃してきた。この技術は、より信頼性が高く、快適で、威圧感の少ない診断を提供することにより、乳ガンの早期発見のための多くの障壁を打ち破る見込がある」と、MITの臨床および同リサーチセンタの看護師長、研究の著者であるCatherine Ricciardiは話している。

超音波画像を見るために、現状では、研究者は、イメージングセンタで使用されているのと同じ種類の超音波装置にスキャナを接続する必要がある。しかし、チームは現在、スマートフォンとほぼ同サイズのイメージングシステムの小型バージョンに取り組んでいる。

ウェアラブル超音波パッチは何度も使用することができ、研究者たちは、乳ガンのリスクが高く、頻繁なスクリーニングの恩恵を受けることができる人々が自宅で使用することを想定している。また、定期的にスクリーニングにアクセスできない人々のガン診断にも役立つ可能性がある。

研究チームは、被験者からデータが収集されると、人工知能を使用して画像が、何年も前に撮影された画像と比較して、時間の経過とともにどのように変化するかを分析し、放射線科医の評価に依存するよりも正確な診断を提供できるワークフローを開発したいと考えている。また、体の他の部分をスキャンするために超音波技術を適応させることの模索も計画している。