August, 18, 2023, Sydney--バイタルサインの追跡は、病院や老人介護施設などの設定では臨床的に必要である。通常、それはパルスオキシメータやスマートウォッチを含む接触ベースのデバイスで行われる。しかし、これらのシステムは24時間体制のモニタリングでは不便であり、快適ではない。また、火傷患者、皮膚領域が十分でない幼児には適していない。カメライメージングは、非接触オプションだが、周辺光条件や皮膚の色による変動の影響を受け、プライバシー懸念もある。
オーストラリアの研究者は、遠隔、高精度バイタルサインモニタリングを可能にするフォトニックレーダーとLiDARを組み合わせたシステムを開発した(Nat. Photon., doi: 10.1038/s41566-023-01245-6)。研究チームによると、このハイブリッド配置は、それぞれのアプローチの利点を活用し、費用対効果の高い、高分解能非接触バイタルサイン検出システムを実現できる。
フォトニックレーダー
RF波を利用するレーダーは、患者のバイタルサインに遠隔からアクセスでき、非接触モニタリングの潜在的なソリューションになる。とは言え、従来の電子レーダーは、帯域幅が狭く、範囲解像度が低いので、近接設置された標的間の区別ができず、呼吸など、微妙な人間のバイタルサインが検出できない。
この困難を回避するために研究チームは、レーダー信号が電子的ではなく、フォトニック的に形成されるシステムのプロトタイプを作製した。フォトニックレーダーシステムは、レーザ光源から始まる。これがシードパルスを音響光周波数シフタを持つファイバループに送る。そのループを各162ーns往復し、パルス周波数は、100MHzシフトされる。ループ内に埋め込まれたEDFAが、多重周回でパルスパワーを維持する。
ファイバループで250往復の後、結果が広帯域(最大30MHz)と高い時間周波数直線性を持つステップ周波数(SF)光信号となる。研究者によると、いずれもバイタルサインレーダーセンシングセットアップにとって重要である。ファイバオプティクスで伝送されるSF信号は、レファランスレーザを持つヘテロダインミキシングによりRFドメインに変換され、伝送アンテナで標的に伝送される。反射されたレーダー信号は、今度は受信アンテナで拾われ、電気光学変調器で光ドメインに変換され、フォトディテクタで記録される。
LiDARエクストラ
バイタルサイン検出のためにレーダー信号を作る利点に加えて研究チームは、次のように指摘している。マイクロ波信号は、最初に光ドメインで作られるので、それはバイタルサインのLiDARセンシングには二役が可能である。これは、それを変換のためにRFドメインに送るよりも、SF光信号の一部をタッピングするだけでよい。
同一ソースからLiDARとレーダーセンシングをする能力は、研究者によると、大きな利点となる。LiDARそれ自体が、距離と分解能を改善し、したがってレーダーの範囲を超えて微妙なバイタルサイン活動を拾い上げることができるが、衣類などの物体への浸透には限界がある。両方法を統合することで、チームは、両方のアプローチの補完的機能を利用し、システムの全般的な正確さと障害耐性を改善することができる。
「このハイブリッドアプローチは、マイクロメートル精度で6㎜までの分解能を持つバイタルサイン検出システムとなった。これは、臨床環境に適している」とシドニー大学、論文の筆頭著者、Ziqian Zhangはコメントしている。
ヒキガエルテストをパス
テストでは、同システムは、約10㎝離して設置した2つの近接したヒトの呼吸シミュレータの呼吸パタンをリアルタイムで正確に区別した。システムは、デバイスの微妙な、ミリメートルレベルの動きから不整呼吸を検出できる感度だった。研究チームによると、多くの医療条件に関連した呼吸異常を正確に同定し、予測さえできる能力を証明している。
チームは次に、人間の代理としてオオヒキガエルの頬領域にセットアップを変更した。その部分は、レーダー断面が人間の胸の領域よりも小さく、実験は人間のトライアルよりも難しくなる。フォトニックレーダーから抽出したデータは、ヒキガエルの頬の動きの正確なトレースを生成、約5㎜の変位だった。研究チームは、そのLiDARシステム、全合成帯域25GHzは、ヒキガエルの呼吸を捉えるには、同様に十分であることを確認した。これは、補完的レーダー、LiDARアプローチの成功を示している。
遠隔からの検出
研究チームは、同システムが臨床設定で連続的、非接触バイタルサインモニタリングで使われることを想定している。信号が低損失光ファイバで多数のセンシングアクセスポイントに送られるので、その設定は、1つの中心的フォトニクス支援レーダープラットフォームから、複数のターゲットを非侵襲的に追跡するために使える。
Zhangによると、次のステップは、ポータブル、ハンドヘルドデバイスで使うために、システムの小型化、フォトニックチップへの組込みである。チームは、人間の被験者で同システムをテストする可能性も考えている。また、老人介護施設のような設定で、動く被験者でそれを使えるように拡張することも視野に入れている。