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バイオメディシン進歩にウイルス・カプシドのプログラミング

July, 24, 2023, Otaniemi--ウイルスをエンカプセルしているタンパク質をDNAおよびRNAオリガミナノ構造を使って所定の形状に成形できる。
バイオエンジニアは、ウイルスタンパク質構成要素とDNAテンプレートを組み合わせることでウイルス粒子のサイズと形状をプログラムする方法を見出した。結果としてのナノ構造は、ワクチン開発、体内の薬剤送達にアプリケーションがある。

ウイルスカプシド(殻)タンパク質、ウイルスのゲノムを保護するタンパク質を使い、正確に構造化されたタンパク質アセンブリを構築することができる。しかし、その形状は、ウイルス株に大きく依存している。これらのアセンブリを再プログラムすることは、オリジナルのウイルス設計図に関係なく、薬剤送達やワクチン開発の可能性を引きつける。

科学者は、カプシドタンパク質を集めることができる「構造化ゲノム」テンプレートを作ることで、その問題に取り組んだ。柔軟なゲノムの変形、意図しない形状を作ることを回避するために研究者は、固いDNAオリガミ構造を利用した。これらの構造は、長さがわずか数十万ナノメートルであるが、完全にDNAでできており、所望のテンプレート形状に正確に折り畳まれている。

「われわれのアプローチは、DNAナノ構造の負電荷とカプシドタンパク質の正電荷を帯びたドメイン間の静電相互作用をベースにしている。これは、シングルタンパク質間の固有の相互作用と組み合わされている。利用されるタンパク質量を変えることで、われわれは、DNAオリガミをエンカプセルした、高度に秩序化されたタンパク質層の数を微調整した」とIris Seitzは、説明している。同氏は、アールト大学、博士課程研究者、論文の主筆。

「DNAオリガミをテンプレートとして使うことでわれわれは、カプシドタンパク質をユーザが定義したサイズと形にすることができ、長さと直径が明確に定義されたアセンブリとなる。様々なDNAオリガミ構造をテストすることで、われわれは、テンプレートの形状が、アセンブリ全体にどう影響するかを学習した」(Seitz)。

「低温電子顕微鏡イメージングの助けを借りて、われわれは、アセンブリしたときに高度に秩序化されたタンパク質を可視化できた、それにより、多様なテンプレートから生まれるアセンブリ形状の非常に小さな変化を計測できた」とJuha Huiskonen教授は説明している。同氏は、ヘルシンキ大学の共同研究者。

「われわれは、カプシドタンパク質を所望の形状に向ける効果的な戦略を確認した。われわれのアプローチは、単一カプシドタンパク質タイプに適用でき、したがって制限はない。これは4つの異なるウイルスからのカプシドタンパク質でわれわれが実証した。加えて、もっとアプリケーションに関連するようにテンプレートを微調整できる。例えば、RNAをオリガミに組み込む。こうすると、結果的に、役に立つ、あるいは部位特異的なタンパク質になる」とMauri Kostianinen教授は、説明している。同氏は、研究プロジェクトリーダー。

タンパク質オリガミ構造は、生物学的なシステムを相互作用させる有望な材料であるが、不安定性に悩まされる、特にDNA分解酵素が存在する場合である。

しかし、実験では、「タンパク質層が、エンカプセルされたナノ構造を分解から効率的に保護することを明確に観察できる。保護と核酸オリガミの機能特性を組み合わせること、DNAあるいはメッセンジャーRNAを他のカーゴー分子とともにデリバリする可能性を含め、われわれのアプローチがバイオメディカルエンジニアリング(生体医用工学)に興味深い未来の方向性を提供していると考えている」とKostianinenは、結論づけている。