July, 10, 2023, 東京--関節リウマチ(Rheumatoid arthritis; RA)は関節に炎症が起こることによって、痛みや腫れが生じる自己免疫疾患の一つ。これまでに、いくつかの抗リウマチ薬が開発されてきたが、ブシラミン(商品名:リマチル;あゆみ製薬)は日本で開発された抗リウマチ薬として知られている。しかしブシラミンの作用機序についてはほとんど解明されていなかった。
東京医科大学医学総合研究所の半田宏兼任教授らの研究グループは、国立国際医療研究センター研究所 肝炎・免疫研究センター 免疫病理研究部 鈴木春巳部長らの研究グループとの共同研究により、アミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetases; aaRSs)がブシラミンの標的タンパクであることを発見した。RAとaaRSsの関連性について研究を進めたところ、RA患者において血清や滑膜液中にaaRSsが放出されていることを発見し、さらに細胞外aaRSsがアラーミンとして機能することで、マクロファージや樹状細胞からサイトカインやProtein Arginine Deiminase 4 (PAD4)を放出させていることを明らかにした。また、ブシラミンはaaRSsによるサイトカイン産生誘導を阻害することも明らかとなり、ブシラミンは細胞外に放出されたaaRSsと結合し、アラーミンとしての機能を阻害することで、抗リウマチ薬の機能を発揮している可能性が示唆された。さらに、アラーミンとしてのaaRSsの機能を抑制する阻害ペプチドの開発にも成功しており、この阻害ペプチドが関節リウマチのマウスモデルにおいて治療効果があることが示された。
今回の研究成果により、aaRSsが細胞外に放出されアラーミンとして機能することで、RAの発症や病態の悪化に大きく関与していることが示されたことから、RAに対してaaRSsを標的とした画期的な新規治療法の確立が期待される。
この研究成果は、2023年7月2日(米国東部時間)のAnnals of the Rheumatic Diseases誌(オンライン版)に掲載された。
(詳細は、https://www.tokyo-med.ac.jp/)