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多目的バイオセンサチップに向けて大きく前進

July, 6, 2023, Washington--UCSCの研究者は、物質の検出、分析に使用するチップベースのセンシングデバイスの著しい改善を明らかにした。
研究成果は、高感度ポータブル集積光流体センシングデバイスの基礎となる。これは、例え、全く異なるタイプの生体粒子、ウイルス粒子やDNAなどに関するものであっても、異なる濃度で、様々なタイプの医療テストを広い範囲で同時実施するために使える。

カルフォルニア大学サンタクルズ(UCSC) W.M. Keck Center for Nanoscale Optofluidics、Holger Schmidtをリーダーとする研究チームは、Opticaに報告したように、新しい信号処理技術を光流体チップベースバイオセンサに適用した。この進歩により、アトモルからナノモルまでの濃度のナノビーズ混合のシームレスな蛍光検出が可能になった。これは、これらのセンサが機能する濃度範囲を10000倍以上に広げる。

「この研究は、単一の生体分子を検出し、幅広い範囲の濃度で機能する集積光流体センシングデバイスの開発でわれわれの最新のステップである」とSchmidtは、コメントしている。「これが単一の方法でできることをわれわれは示した。これによりわれわれは、濃度が大きく違っていても、多数の粒子タイプを同時に計測し、区別することができる」。

多目的テストデバイス作製
多くのタイプのチップベーステストデバイスが開発されているが、ほとんどは一つのターゲつと、テストタイプに焦点を当てている。生体分子が多くの異なる形態で、また大きく異なる量で現れるからである。例えば、病気の倍マーカーとして使用される様々なタンパク質の濃度は、10桁以上異なることがあり得る。

Schmidtのグループは、Brigham Young UniversityのAaron Hawkinsと協力して、マルチタイプ分析に使えるテストプラットフォームの開発に取り組んでいる。それは光流体チップベースであり、シリコンまたはプラスチックチップにオプティクスとマイクロ流体チャネルを統合している。粒子は、それらにレーザビームを照射し、光ディテクタで粒子からの反応を計測することで検出される。

研究チームは、そのプラットフォームが様々なタイプの分析を行うのに必要な感度を持ち、多くの異なる粒子タイプを検出できることを以前に実証している。これには、核酸、タンパク質、ウイルス、バクテリア、ガンバイオマーカーが含まれる。しかし、研究チームは、これまでは、高濃度と低濃度の粒子を計測するために個別のディテクタと信号分析技術を使用していた。これは必要であった。一つのタイプの粒子が非常に高濃度であるなら、それが大きな反応を示し、低濃度で存在する別の粒子タイプからの遙かに小さな信号を圧倒するからである。

信号処理の改善
新しい研究では、Schmidtと院生、Vahid Ganjalizadehが、信号処理法を開発した。これを使って、高濃度と低濃度の両方で粒子を同時検出することができる。例え前もって濃度が分かっていなくても可能である。これをするために研究チームは、様々な信号変調周波数を統合した。高周波レーザ変調は、低濃度で信号粒子を区別するため、低周波レーザ変調は、高濃度で多くの粒子を大きな信号から同時検出するためである。

「第2に、信号が実際に大きく、それにしたがって入力レーザパワーを調整する時に検出するフィードバックループを実装した。この方法で、われわれは、高濃度の大きな信号を検出できる。低濃度で他の種に存在する可能性がある弱い信号が圧倒されることはない。これにより、非常に異なる濃度で存在する粒子を同時に検出することができた」(Schmidt)。

研究チームは、低濃度、シングル粒子信号をリアルタイムで特定するために最近開発した非常に高速のアルゴリズムも適用した。マシンラーニングは、異なる粒子タイプが高精度に区別できるように、信号パタンの認識にも役立つ。「これらの信号分析の進歩は、信号品質が悪く、データ分析がリアルタイムで求められるような診断現場におけるデバイスの動作を可能にするには理想的である」(Schmidt)。

低濃度と高濃度の区別
研究チームは、様々な濃度のナノビーズ流体、様々な蛍光カラーで光流体バイオセンサチップを励起することでその信号分析アプローチを実証した。現在、イエローーグリーンとクリムゾン(深紅色)ビーズ濃度の両方の濃度を正確に確定できる。混合物で、その濃度が10000倍以上違っていても確定できる。

「この研究は、光蛍光信号ベースの特別な集積センサの進歩を促進するが、その信号分析技術は、幅広い濃度範囲をカバーする、いかなる時間依存信号でも利用できる。これは、様々な光信号を含むが、電気センサも包含可能である」(Schmidt)。

チームの光流体バイオセンシング技術は現在、医療デバイス会社Fluxus Incによって商用化が進められている。研究チームは、人工神経細胞組織オルガノイドからの分子製品研究にその方法を適用するためにも取り組んでいる。このプロジェクトは、ゲノム科学(Genomic Science)の国立衛生研究所(NIH) Center for Excellence生細胞ゲノミクス(Live Cell Genomics) UCSC Centerの一環であり、神経変性疾患や小児ガンなどの分野へのさらなる洞察を提供できる。