June, 28, 2023, 東京--東京大学など研究チームは、光スイッチングの可能なラマンプローブによる超解像イメージングに成功した。
光を用いて試料の分子振動を検出するラマン顕微法は、蛍光法と比べて多重検出能に優れており、一度に複数の標的を可視化できるイメージング手法として注目を集めている。しかし、その空間分解能は回折限界(光の波長程度)に制限されており、生体内の微細構造を観察する上での障壁となっていた。
研究では、光でラマン信号を制御可能な光スイッチングラマンプローブを用いることで、ラマン顕微法による超解像イメージングを実現した。まず、信号強度の高い光スイッチングラマンプローブDAE620を開発し、この分子に微弱な紫外線あるいは可視光を照射することでラマン信号をON/OFFできること、また、この光スイッチング動作は細胞中やショウジョウバエ組織中でも可能であることを確認した。さらに、この分子で細胞小器官を染色し、紫外光と可視光ドーナツビームを照射しながら誘導ラマン散乱(SRS)顕微法によるイメージングを行うことで、回折限界を越える空間分解能を実現できることを実証した。
今後、光スイッチングラマンプローブを多色化し、超多色・超解像イメージングを実現することができれば、生体内の複数種の構成要素の微細構造を観察することが可能となり、生命や病気の仕組みの解明などにつながることが期待される。
研究成果は、米国東部夏時間6月16日付の「Science Advances」に掲載された。
研究グループ
東京大学先端科学技術研究センターの小関泰之教授(研究当時:同大学大学院工学系研究科電気系工学専攻)と同大学大学院工学系研究科電気系工学専攻の寿景文大学院生(研究当時)、東京工業大学 生命理工学院の神谷真子教授ら、東京大学大学院薬学系研究科の駒沢歩弥大学院生(研究当時)ら、同大学大学院工学系研究科電気系工学専攻の三田吉郎教授と安永竣助教(研究当時:特任研究員)