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薬剤送達、炎症検知できる縫合糸を構造設計

June, 9, 2023, Cambridge--生物由来の「スマート縫合糸」は、腸切開あるいは他の種類の手術の後、患者の治癒に役立つ。

数千年前に開発された縫合糸からヒントを得てMITエンジニアは、“smart”縫合糸を設計した。これは、組織を固定するだけでなく、炎症を検出し、薬剤を放出できる。

その新しい縫合糸は、動物の組織由来である。古代ローマ人が最初に使った“catgut”縫合糸と同じである。現代の開発では、MITチームは、その縫合糸をヒドロゲルでコーティングしている。これは、センサ、薬剤、治療分子を放出する細胞さえも埋込可能である。

「われわれが持っているものは、生物由来、ヒドロゲルコーティングで改変した縫合糸。これは、炎症センサ、あるいは炎症を治療するモノクロナール抗体などの薬剤を入れておくことができる。注目すべきは、そのコーティングは、長期間生存できる細胞を保持できること」とGiovanni Traversoは説明している。同氏は、MIT機械工学准教授、Brigham and Women’s Hospitalの胃腸科専門医、論究のシニア著者。

研究チームは、これらの縫合糸が、腸の一部を切除する手術後のクローン病患者の治癒に役立つと考えている。その縫合糸は、研究者によると、身体のどこでも、キズや切除手術治癒に適用できる。

以前のMITポスドクJung Seung LeeとHyunjoon KimがMatter誌に発表した論文の主要著者。

カットガットからヒント
腸線縫合糸、牛、羊、山羊(ネコではない)の純化されたコラーゲンのストランドでできたカットガット縫合糸が、90日以内に自然に分解される強力な結び目を形成する。合成の吸収可能縫合糸も利用できるが、腸線は多くの種類の手術でまだ使われている。

Traversoとチームは、この種の組織から採った縫合糸に立脚して、丈夫で吸収性があり、センシングや薬剤送達などの先進的機能がある材料の作製ができるかどうかを検討したかった。

そのような縫合糸は、特にクローン病患者には有用である。過度の瘢痕あるいは炎症からの妨害のために、腸の一部を除去する必要がある患者である。この処置は、腸の一部分を切除した後に残された両端を再封する必要がある。その封止がしっかりしていないと、患者にとって危険な漏れにつながる。

このリスクを減らすためにMITチームは、組織を所定の場所に保持すると共に、再封止した腸が適切に治癒されていないという初期の警告サイン、炎症を検出できる縫合糸を設計したかった。

研究チームは、ブタの組織から新しい縫合糸を作製した。洗剤を使ってこれを「脱細胞」し、ホスト組織の炎症を誘発する確率を減らす。このプロセスにより、研究者が“De-gut,”と言う細胞フリー材料が残される。これは、コラーゲンのような構造タンパク質を含む、また細胞を取り囲む細胞外マトリクスに見つかる他のバイオ分子も含む。

その組織を脱水し、それを捻ってストランドにした後、研究チームは、その引張強度を評価した。壊れるまでにどの程度の引き伸ばしにそれが耐えられるかの尺度である。さらに、チームは、それが市販入手可能な腸線縫合糸に匹敵することを確認した。その腸の縫合糸は、従来の腸線縫合糸よりも周囲の組織からの免疫反応が遙かに少ないことを確認した。

「脱細胞化組織が、その優れた生体機能性により、再生医療で広範に利用されている」とLeeは言う。「われわれは、脱細胞化組織を利用し、センシングやデリバリの新しいプラットフォームを提案している。これは、組織由来の材料の新たなアプリケーションを開く」。

スマートアプリケーション
次に、研究チームは、縫合糸材料を追加機能で強化しようとした。そのために、チームはヒドロゲル層で縫合糸をコーティングした。ヒドロゲル内に研究チームは、複数の種類のカーゴーを埋め込むことができる。炎症を検出するマイクロ粒子、様々な薬剤分子、生きた細胞。

センサアプリケーション向けに研究チームは、MMPsという炎症に関連する酵素が組織に存在する時に放出されるペプチドで被覆されたマイクロ粒子を設計した。そのペプチドは、簡単な尿検査で検出可能である。

研究チームは、薬剤キャリーにヒドロゲルコーティングが使えることも示した。これは、炎症性腸疾患の治療に使用する、これにはデキサメタゾンと言うステロイド、アダリムマブ(ADA)というモノクロナール抗体が含まれる。これらの薬剤は、PLGAやPLA などFDA認定ポリマで作られたマイクロ粒子で運ばれた。これらは、薬剤放出レートの制御に使われる。このアプローチは、研究者によると、抗生物質、化学療法薬など他の種類の薬剤デリバリにも適用可能である。

これらスマート縫合糸は、幹細胞など治療用細胞のデリバリにも使用できる。その可能性を研究するために研究チームは、蛍光マーカーを発するように改良した幹細胞とともにその縫合糸を埋め込んだ。マウスにインプラントして少なくとも7日間は、その細胞が生きていることを確認した。その細胞は、血管内皮増殖因子(VEGF)、血管細胞の成長を刺激する成長因子も生み出すことができた。

研究チームは、現在、これらの可能性のあるアプリケションのそれぞれについてさらなるテストに取り組んでいる。また、縫合糸の製造プロセスの拡張にも取り組んでいる。チームは、消化管以外で身体の一部にその縫合糸を使う可能性の探究も考えている。

「MITチームが開発した脱細胞化腸縫合糸は、幅広い範囲の治療でセンシングとデリパリングの素晴らしプラットフォームである。小さな分子、生物製剤、生きた細胞などが含まれる。チームは、このプラットフォームの多様性をしっかりと実証する大きな仕事を仕上げた」とOmid Veisehは、コメントしている。同氏は、この研究には携わっていないが、ライス大学バイオエンジニアリング准教授。