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神経科学者、アルツハイマー病に対して特に脆弱な細胞特定

May, 12, 2023, Cambridge--記憶回路の一部を形成するニューロンは、アルツハイマー病で神経変性の兆候を示す最初の脳細胞である。

神経変性、つまりニューロン機能の漸進的損失は、アルツハイマー病の主要特徴の一つ。しかし、それは脳の全ての部分に等しく影響することはない。

アルツハイマー病で神経変性を示す最初の脳領域の一つは、乳頭体という視床下部の一部。新しい研究でMITの研究者は、神経変性や多動の影響を最も受けやすいこの体内のニューロンサブセットを特定した。研究チームは、この損傷が記憶障害に至ることを確認した。

研究成果は、この領域がアルツハイマー病の最初期の兆候の一部に寄与していることを示唆している。したがって、研究者によると、その病気治療に対する新しい薬剤の格好のターゲットになる。

「内側乳頭体ではなく、外側乳頭体ニューロンだけが多動性になり、アルツハイマー病の神経変性となることは、興味をそそる」とMITのPicower Institute for Learning and Memoryディレクタ、Li-Huei Tsaiは、話している。

マウスの研究で、チームは、乳頭体ニューロンの多動性や神経変性を原因とする記憶障害を現在、癲癇治療に使われている薬剤で逆転できることを示した。

前MITポスドクWen-Chin (Brian) HuangおよびMIT 院生Zhuyu (Verna) Pengと Mitchell Murdockが論文の主筆。論文はScience Translational Medicineに発表された。

神経変性になりやすい
アルツハイマー病が進行すると、アミロイドβプラークの蓄積、ミスフォールドタオタンパク質とともに神経変性が起こる。未解決の疑問は、この神経変性が無差別に起こるのかどうか、あるいはニューロンの特定タイプが、より影響を受けやすいか、ということである。

「機能不全と変性が起こりやすい種類のニューロンの特別な分子特性を識別できると、神経変性の理解が向上する。これは臨床的に重要である。これらの脆弱な集団を治療的にターゲットにし、認知機能低下の始まりを遅らせること可能性があるからだ」とMurdockは説明している。

2019年の研究でアルツハイマー病のマウスモデルを使い、Tsai, Huangなどは、乳頭体が、アミロイドベータの最高密度であることを見出した。乳頭体とは、視床下部の左右下部にある一対の構造。これら乳頭体は、記憶に関連していることが知られているが、正常な記憶およびアルツハイマー病におけるその正確な役割は知られていない。

乳頭体の機能についてさらに知るために研究チームは、シングルセルRNAシーケンシングを利用した。これは、組織サンプルの様々なタイプの細胞内で活性な遺伝子を明らかにできる。このアプローチを使い研究チームは、2つの主要なニューロン集団を特定した、一つは内側乳頭体に、もう1つは側乳頭体にある。側乳頭体では、シナプス活性に関連する遺伝子は、極めて高発現であった。チームは、これらのニューロンが内側乳頭体ニューロンよりもスパイキング率が高いことを確認した。

それらの差に基づいてチームは、側方ニューロンがアルツハイマー病の影響を受けやすいかどうかについて懐疑的であった。その問題を探求するために、チームは、ヒトの早期発生アルツハイマー病に関連する5つの遺伝子変異をもつマウスを調べた。これらのマウスは、健康なマウスに比べると、外側乳頭体ニューロンで多動性が高いことを示した。しかし、健康なマウスの内側乳頭体ニューロンとアルツハイマー病モデルには、そのような差は見られなかった。

研究チームは、この多動性は、非常に早期に、月例2ヶ月(ヒトの青年期に相当)に現れたことを確認した。アミロイドプラークが発達し始める前である。側方ニューロンは、マウスの年齢が進むにともないさらに多動になる。また、これらのニューロンは、内側ニューロンよりも神経変性の影響も受けやすかった。

「多動性は、記憶回路の機能不全に関連しており、ニューロン死につながる細胞の進行にも関連しているとわれわれは考えている」(Murdock)。

アルツハイマー病のマウスモデルは、新しい記憶の形成に障害を示したが、チームが神経活動亢進を抑制する薬剤で、そのマウスを治療すると、記憶作業能力は著しく改善された。この薬剤は、レベチラセタムとして知られ、癲癇発作処置に使用され、臨床ではテンカン様活動、アルツハイマー病患者では発作のリスクが高まる大脳皮質の過剰興奮の治療にも使われる。

マウスと人間の比較
研究チームは、Religious Orders Study/Memory and Aging Project (ROSMAP)からのヒトの脳組織を調べた、これは長期にわたる研究であり、1994年以来、老年の人々の記憶、運動、他の年齢に関連する問題を追跡した。アルツハイマー病の人々、病気のない人々の哺乳類体組織の単細胞RNA配列を使い研究チームは、ニューロンの2つのクラスタを確認した。これらは、マウスに見つけた側面および内側乳頭帶ニューロンに匹敵する。

マウスの研究と同様、チームは、アルツハイマー病の組織サンプルからの側方乳頭体に多動のサインも見出した、これにはカリウムおよびナトリウムチャネルをエンコードする遺伝子の過剰発現が含まれる。そのようなサンプルで、チームは、側方ニューロンクラスタに、中間クラスタと比較してハイレベルの神経変性も見出した。

アルツハイマー病患者の他の研究で、その病気の早期に、プラークの沈着、変化したシナプス構造とともに、乳頭体量の損失が確認された。これらの結果の全てが、乳頭体が薬剤の格好の標的となることを示唆している。これによりアルツハイマー病の進行を減速できる、研究者は見ている。

Tsaiのラボは、乳頭体の側方ニューロンが、脳の他の部分とどのようにつながっているかをさらに明らかにすることに取り組んでいる。それが記憶回路をどのように形成するかを解明するためである。研究チームは、乳頭体の側方ニューロンのどんな特性が、神経変性やアミロイド沈着に対して脆弱になるかについてもっと研究する考えである。