January, 13, 2023, Pittsburgh--ピッツバーグ大学の研究チームは、ガンと闘うナノ粒子を設計した。それは、Nature Nanotechnologyの論文によると、化学療法薬と新しい免疫療法を共送達する。
新しい免疫療法アプローチは、研究者が発見した免疫抑制に関わる遺伝子を静まらせる。既存の化学療法薬と組み合わせて、微小なナノ粒子に詰めると、その療法は、大腸ガンや膵臓ガンのマウスモデルで腫瘍を縮小した。
「われわれの研究には2つの画期的な面がある。新しい治療標的と新しいナノキャリアの発見である。免疫療法と化学療法薬を選択的に送達する際に極めて効果的である。この研究は、技術移転制が極めて高いので、ワクワクしている。われわれは、まだ、このアプローチが患者で有効であるかどうかを知らないが、研究成果は、可能性が大きいことを示唆している」と薬学部、薬学教授、Song Li, M.D., Ph.Dは、話している。
化学療法は、ガン治療の中心であるが、残存ガン細胞は生き残り、腫瘍の再発を起こす。このプロセスは、フォスファチジルセリン(PS)と言われる脂質に関与している。これは、通常、腫瘍細胞膜の内層に見つかるが、化学療法薬に反応して細胞表面に移動する。表面では、PSは、免疫抑制剤として機能し、残存ガン細胞を免疫系から守る。
研究チームは、化学療法薬フルオロウラシル&オキソプラチン(FuOXP)による治療でXkr8レベル増となることを見出した。Xkr8は、細胞膜上のPS分布を制御するタンパク質。この研究成果は、Xkr8をブロックすることでガン細胞がPSを細胞表面に追いやるのを阻止することを示唆していた。これにより免疫細胞は、化学療法後に残存するガン細胞を掃討することができる。
最近Cell Reportsに発表された独立の研究で、ピッツバーグ大学、免疫学准教授、Yi=Nan Gong Ph.Dも、Xkr8を抗腫瘍免疫応答を強化する新しい治療ターゲットとして特定していた。
Liとチームは、低分子干渉RNA(siRNA)と言われる遺伝コードの小片を設計した。これは、特定のタンパク質、この場合はXkr8の生成を停止する。siRNAとFuOXPをいっしょにデュアル作用ナノ粒子に詰め込むと、次のステップは、それらで腫瘍を標的にすることである。
ナノ粒子は一般に、健康な組織の完全な血管に入り込むには大きすぎるが、ガン細胞には到達できる。腫瘍は、穴の開いた未発達の血管を持っていることがあるからだ。しかし、この腫瘍標的アプローチには制約がある。人の腫瘍の多くは、ナノ粒子が透過するほどに大きな穴がないからである。
「人々を乗せて川の片側から他方へ運ぶフェリーのように、われわれは、穴に依存しないで無傷の血管にナノ粒子を透過させるメカニズムを開発したかった」(Li)。
そのようなフェリーを開発するために研究チームは、ナノ粒子の表面にコンドロイチン硫酸とPEGを塗った。これらの化合物は、腫瘍血管と腫瘍細胞の両方に共通の細胞受容体に結びつくことで、ナノ粒子が腫瘍を標的にし、健全な組織を回避するのを助ける。
マウスに注入すると、約10%のナノ粒子が腫瘍に向かって進んだ。ほとんどの他のナノキャリアプラットフォームに対して著しい改善である。発表された以前の分析は、平均してわずか0.7%のナノ粒子薬剤が標的に到達したことを確認している。
デュアルアクションナノ粒子は、化学薬剤FuOXPだけを持つナノ粒子と比べて、細胞表面への免疫抑制PSの移動を著しく低減した。
次に研究チームは、大腸ガンと膵臓ガンのマウスモデルで、そのプラットフォームをテストした。FuOXPとsiRNAの両方を含むナノ粒子で処置された動物は、プラシーボあるいはFuOXP投与を受けた動物と比較して、抗ガンT細胞が多く、免疫抑制T細胞が少ない腫瘍微小環境となった。
結果、siRNA-FuOXPナノ粒子を受けたマウスは、一つだけを運ぶナノ粒子を受けた動物と比較して、腫瘍サイズか飛躍的に減少した。
Liによると、その研究は、FuOXP-siRNAナノ粒子と別のタイプの免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせる可能性も示している。PD-1のような免疫チェックポイントは、免疫系のブレーキとして機能するが、免疫チェックポイント阻害剤は、そのブレーキを解除して免疫細胞がガンと闘うのを支援する。
研究チームは、FuOXPナノ粒子は、siRNAあるなしに関わらず、PD-1発現を増やすことを確認した。しかし、PD-1阻害薬を加えると、その組合せ治療は、マウスでは腫瘍の成長と残存の大幅な改善となった。
新しい治療法を臨床に応用することを目指して、チームは現在、さらなる実験により研究成果を検証し、副作用の可能性をさらに精査しようとしている。
(詳細は、https://www.upmc.com)