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ラマン顕微鏡技術の感度とスピード改善

August, 30, 2022, Milano--ミラノ工科大学の研究チームは、ラベルフリー、非侵襲的ラマン分光アプローチを開発した。これは、前例のないスピードと感度で、生体サンプルの顕微画像を撮り、幅広い範囲の生体分子を特定できる。

ミラノ工科大学の研究チームリーダー、Dario Polliは、「われわれの研究は、非侵襲的、ラベルフリー、使いやすい臨床用デバイスになる。この革新的顕微鏡は、DLベースアルゴリズムと一体となって、ヒト組織や細胞の化学成分を可視化することで、最終的にガン診断を簡単かつ高速にする」と説明している。

Optics Expressで研究者は、コヒレントアンチストークスラマン散乱(CARS)顕微鏡に基づいた新技術を説明している。CARS顕微鏡は、超短レーザパルスと生体サンプル間の相互作用を利用して分子の振動シグネチャに基づいた画像を生成する。

新しいアプローチは、フィンガープリント領域として知られる振動スペクトル、400 ~ 1800 cm−1、検出されにくい領域にアクセスできる。多くの個別化合物は、この領域で振動フィンガープリントを使って特定できるが、弱い信号になりがちで、検出が難しい。

「バイオメディカル科学で一般に利用されている技術は、染色を必要とする。これは、煩わしいだけでなく、構造的、化学的変化をもたらし、これらはイメージングやデータ処理でアーチファクト、即ちエラーになり得る。われわれのシステムは、ラベルなしで、生体組織の多くの異なる化学種間を区別できるので、生細胞イメージング、組織生検分析に有用である」とPolliは説明している。

低繰り返しレート、高速イメージング
この新研究は、欧州委員会が助成するCRIMSONプロジェクトの一環であり、目的は、高速の細胞および組織分類のために振動分光法を利用するターンキーイメージングデバイスの開発。プロジェクトの目標は、病気の細胞起源の研究を変えること。これは、個人化治療を前進させるられる新しいアプローチを可能にする。

この目標への重要な一歩として研究者は、NIR波長で約270fs幅の超短パルスを生成する商用レーザベースCARS顕微鏡を開発した。研究チームは、2MHzの繰り返しレートのレーザパルスを使用する顕微鏡システムを設計。これは、ほとんどの他のCARSシステムで使用されている40MHz、あるいは80MHzよりも遙かに低いレート。

この低繰り返しレートは、サンプルへの光熱損傷を減らす。2つの連続パルス間で0.5µsの遅延となるからである。それは、焦点でパルスエネルギーとピーク強度を高くする、これはより強いCARS信号となり、高速のアクイジション速度となる。

「低い繰り返しレートの最も重要な利点は、それによってわれわれがブロードバンド、レッドシフトストークスパルスを生成できること。これは、バルク結晶で白色光スーパーコンティニウム生成を利用することでフィンガープリント振動全体をカバーする」とFederico Vernuccioは説明している。同氏は、ミラノ工科大学博士課程学生、論文の筆頭著者。「他の方法と比べて、このアプローチは、技術的に簡素であり、よりコンパクトでロバストである」(Federico Vernuccio)。

標準セットアップと比較してレッドシフトしたスペクトル領域の利用の意味は、光損傷開始前に、より高い光強度が利用できること。研究チームは、標準数値計算アプローチと人工知能(AI)を組み合わせた新しいアルゴリズムを開発した。これらアルゴリズムは、取得したデータからより多くの情報を読み出し、それを画像に変える。これにより様々な化学種が簡単に区別できるようになる。

「われわれの改善によりCARSシステムは、最先端の取得スピードで高品質画像を供給する。われわれのシステムは、サンプルの完全性に妥協することなく、1ms以下のピクセル滞留時間である。このスピードは、分光計のリフレッシュレートによって制約される」(vernuccio)。

高速感度
システムをテストするためにチームは、新しい顕微鏡で読み出したスペクトルと遅いけれども最先端の振動分光学技術を利用して取得したスペクトルを比較するレファランスサンプルを使用した。2つの方法は、優れた一致を示しており、新しいシステムが、優れたスペクトル分解能と化学的特性により極めて高速でスペクトルを供給できることを示している。

研究チームは、次に、様々な濃度の一連のジメチルルスルホキシド溶液のCARSスペクトルを取得することで、システムの検出限界を確認した。システムは、前例のない感度14.1 mmol/literで化学濃度を計測することができた。これは、フィンガープリント域で動作する他のCARSシステムの感度の約2倍である。

研究チームは、振動シグネチャに基づいて、様々な透明マイクロサイズプラスチックビーズの区別、空間的位置確認をするシステムの能力を示した。また、生体組織から計測し、その技術が、損傷を与えることなく生体サンプルに作用することを証明した。

「われわれのCARS顕微鏡で、より高速に、化学的特異性をもつラベルフリーイメージングが可能になる。したがって生細胞のラマンイメージング実行可能性が高まる。これによりわれわれのシステムは、ガン細胞と免疫細胞の相互作用を分析、例えば、化学療法が細胞へどのように影響するかを評価するために使える」(Polli)。

研究チームは現在、白色光スーパーコンティニュウム生成によりストークスパルスのさらに広い波長範囲を達成することでシステム改善に取り組んでいる。これは、イメージング速度と検出できる化学分析物数の両方を改善する。チームは、商用プロトタイプと検出システム向けに使いやすいソフトウエア、コンパクトな光源と設計を開発することで商用化に取り組んでいる。