September, 9, 2014, Washington--ストーニーブルック大学と国立衛生研究所の研究チームは、レーザベースの計測法を使う技術で、コカインがマウスの脳の血流をどのように妨げるかを示した。同大学生体医学工学教授、Yingtian Pan氏によると、結果として得られた画像はこの種のものでは初めてであり、鮮明にそのような効果を直接的に記録している。
コカインなどの薬物は、動脈瘤的な出血や脳卒中を起こすが、脳の血管に起こることの詳細はよく分かっていない。Pan氏によると、これは現在のイメージングツールで見える範囲が限定されているからである。しかし新しい方法を使うことにより、研究チームはマウスの脳の微細血管にコカインがどのような影響を与えるかを正確に観察することができた。画像によって明らかになったことは、30日間の常習的コカイン注射の後、あるいは緊急に繰り返しコカインを注射した後、血流速度が著しく低下した。研究チームは初めて、コカインによる微小虚血、血流の遮断を特定することができた。これは脳卒中の予兆である。
血流の測定は、脳がどのように活動しているかを理解するためには不可欠。これは、薬剤あるいは病気が脳の生理学、代謝作用、機能にどのような影響を与えるかを知ろうとする外科医、神経科学者にとって必要。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)は、非酸素化血液の流れ全体を適切にマッピングするが、いわゆる毛細血管内部に起こっていること知るには解像度が足りない。一方、2光子顕微鏡のような方法は、蛍光染料でラベリングされた血液細胞の動きを追跡するが、見える範囲は狭く、一度に数本の血管を測定するだけで脳血管網の血流を見ることはできない。
数年前、Panの研究グループはドップラOCT(ODT)という別の方法を開発した。この技術では、レーザ光は動く血液細胞を直撃して跳ね返ってくる。反射光の周波数シフトを計測することで研究者は、血液の流れの速さを判断することができる。
ODTは、高分解能で視野が広い。蛍光染料も必要ない。
しかし現在、ODTには2つの問題がある。感度があるのは限られた血流速度であること、毛細血管の遅い血流には十分な感度がない。最近発表した新しい方法には、、位相加重という新しい処理方法を組み込んでいる。これにより、毛細血管の血流のイメージングも可能になる。
従来のODTのもう1つの限界は、血管が入力レーザに対して垂直である場合ODTが機能しないこと。画像では、レーザ光の線に対して垂直となる血管部分は見えない、むしろ暗く見える。しかしこの黒い点付近で上下に傾斜する血管を追跡することで研究チームは、失ったデータを補間するためにその情報を使う方法を開発した。
ODTは表面下わすが1~1.5㎜しか見ることができないので、脳の奥深くを調べようとすると、その方法は小型動物に限られる。とは言え、Pan氏によると、手術室で脳が露出しているときはそれでも有用であり、例えば医師が腫瘍の手術をする時の助けになる。
その新しい方法は、小さな血管や血管網を見るのに最適であるので、目の毛細血管の撮像にも使える。また、「バイオエンジニアが、組織操作をする際に、新しい血管の成長をモニタするためにその方法を使うことができる」とPan氏はコメントしている。さらに、脳の血流についての情報は、麻薬中毒者の新たな治療オプション開発にも適用できる。
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左が健康なマウスの脳、右がコカインを注入したマウスの脳。