August, 26, 2014, New York--金のナノ粒子を脳のガン細胞に潜り込ませる技術は、実験室ベースのテストで極めて効果的であることが証明された。
脳の悪性ガンに対する「トロイの木馬」治療は、腫瘍細胞を殺す金のナノ粒子を用いるが、研究チームはそのテストに成功した。
この画期的な技術はいずれは多形性膠芽腫(GBM)の治療に用いられることになる。GBMは、成人ではごくありふれた悪性脳腫瘍であり、治療が難しいことで知られている。患者の多くは診断数ヶ月で死亡し、条件によって5年後も生存するのは100人にわずか6人である。
研究は、金と抗ガン剤の両方を含むナノ構造を設計するものだった。抗ガン剤は通常の化学療法薬剤。これらを、膠芽腫患者から取り出して実験室で成長させた腫瘍細胞に送り込んだ。
一旦中に入るとこれらの「ナノ粒子」に放射線療法を行った。これにより金が電子を解放し、それがガン細胞のDNAと構造全体に損傷を与え、化学療法薬剤の効果を強める。
このプロセスは非常に効果的であり、20日後、細胞培養に回復の証拠は全く見られなかった。これは、腫瘍細胞が破壊されたことを示唆している。
同じ技術を膠芽腫患者の治療に使用できるようになる前にさらにやるべきことがあるが、この成果は将来の治療に非常に有望な基盤となる、と研究チームは見ている。重要なことは、この研究が膠芽腫患者から直接取り出した細胞株で実行されたことであり、研究チームはこのアプローチを、進化して薬剤に抵抗力を持つ腫瘍でテストすることができる。
今まで、GBMは治療に対する抵抗力が強いことが分かっている。その理由の1つは、腫瘍細胞が周辺の健全な脳組織に侵入し、実質的に手術で腫瘍を除去することが不可能であるからだ。
単独で使用すると、化学療法薬剤は腫瘍の拡大を遅らせるが、多くの場合、これは一時的であり、細胞の数は間もなく回復する。
「ガン細胞を1つ以上の治療で同時に直接攻撃する必要がある」と臨床神経科学部のDr. Colin Wattsは言う。「これは重要である。ガン細胞の中には、処置によって抵抗力が違うものがある。ナノテクノロジーは、このガン細胞にダブルパンチを見舞う機会を与えてくれ、将来の新たな治療オプションを切り開く」。
より包括的に腫瘍を撃退しようとして研究者たちは、金ナノ粒子を治療に使う方法を研究していた。金は、無害な材料であり、それ自身は患者にとって全く脅威ではない。粒子のサイズや形状は非常に正確に制御できる。
放射線治療を受けると金粒子は、低エネルギー電子、オージェ電子を発し、病気の細胞のDNAや他の細胞内分子に損傷を与えることができる。この低エネルギー放射は、その影響範囲が短いことを意味しており、近傍の健康な細胞に重大な損傷を与えることがない。
金ナノ粒子の放射線増感作用と組み合わせた抗ガン剤の化学療法がシナジー効果を強化し、細胞に効果的な損傷を与えることができた。続くテストでは、わずか20日の間に、処置されない細胞培養と比べて、この治療が、細胞の数を10万倍減らしていることが明らかになった。新たな細胞の再生は検出されなかった。
研究チームは、このアプローチは、他のタイプの難しいガンの治療にも使えると考えている。
(詳細は、www.cam.ac.uk)