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レーザと音波を使うハンドヘルド機器で黒色腫を深部イメージング

August, 14, 2014, Washington--ワシントン大学セントルイス校の研究チームによると、レーザと音響波を使う新しいハンドヘルドデバイスは、黒色腫の治療と診断を変える可能性がある。
 同装置は、初めて直接患者に使用でき、黒色腫(メラノーマ)が皮膚にどの程度深く拡大しているかを正確に計測し、処置、診断、予後のために貴重な情報を提供する。
 黒色腫は、米国で5番目によく見られるガンタイプで、発生率は他のどのガンよりも急速に上昇しており、皮膚ガン死の75%以上を占めている。
 メラノーマ腫瘍が厚ければ厚いほど、ますます広がりやすく致命的になる、と皮膚科医Lynn Cornelius氏は言う。生体内の腫瘍の深さを測れることにより医師は予後をより正確に判断でき、それに応じて処置や手術の計画が立てられる。
 問題は現在の方法は、患者の腫瘍を直接うまく測ることができないところにある。皮膚は光を散乱するので、高分解能の光学技術は十分な深さに到達しない。「メラノーマの診断、予測、手術計画に少なくとも必要となる2~4㎜の深さまでの計測できるものは実際に何もない」とLihong Wang氏は言う。
 先頃、Wang氏を含む研究チームが光音響顕微鏡というアプローチを適用した。これは、患者の皮膚でメラノーマ腫瘍を直接、正確に測ることができ、したがって医師は状況次第で不確実となることを避けられる。
 この技術は、光が振動に変換される光音響効果を利用している。新しい機器の場合、レーザビームを腫瘍部分の皮膚に照射する。メラニン、皮膚の色素も腫瘍であるが、これが光を吸収し、そのエネルギーが高周波音響波で伝搬する。光と異なり音響波は、皮膚を通して伝播する際に散乱しない。腫瘍細胞は周囲の皮膚細胞よりも多くのメラニンを生成しており、結果として、音響波を使って腫瘍全体を高解像度でマッピングできる。機器は、音響信号をスクリーン上で3D画像に変換できる検出器を備えている。
 研究チームは、黒いジェラチンで造った人工腫瘍と生きたネズミの本当の腫瘍の両方でその機器をテストし、計測器が腫瘍の深さを正確に計測できること、生きた組織でもそれができることを示した。
 まずは、このツールは手術目的で医師の計画と準備の仕方を改善するために主に用いられるが、すばらしいことは、このツールが腫瘍の全体量を計測できることである、これはメラノーマではこれまで決してできなかった。研究者が、その量がガンの結果とどのように関係するかを判断できるなら、このツールは診断と予後のために医師に新しいタイプの計測を提供できることになる。
 研究チームは、人間の患者で現在さらにテストを行っている。この新しい機器は、普及して使われるようになるまでに、臨床試験で効果を実証しなければならない。ただし、Wang氏によると、この機器は基本的に商用化の準備ができている。