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超短パルスレーザでバクテリアスーパーバッグを殺す

December, 7, 2021, St. Louis--ワシントン大学セントルイス医科の研究者は、超短パルスレーサが多剤耐性バクテリア、頑強な細菌胞子を殺すことを確認した。
 Journal of Biophotonicsに発表された研究成果は、他の方法では殺すのが困難なバクテリアを殺すためにそのようなレーザの利用可能性を開くものである。研究チームは、そのようなレーザがヒトの細胞に害を与えないことを以前に示している。したがって、キズの殺菌、血液製剤の消毒へのレーザ利用の可能性があると研究者は考えている。

「短パルスレーザ技術は、病原菌を比類なく不活性化する、一方でヒトのタンパク質や細胞を守る」と論文の筆頭著者、Shaw-Wei (David) Tsen, MD, PhDは説明している。「外科的創傷を閉じる前に、その箇所にレーザビームをスキャンすることで、感染の確率をさらに減らせる、と考えられる。この技術は、体外の生物学的製剤の殺菌に間もなく使われるようになると見ている。さらに、将来的には、透析で患者の血液をレーザ処置デバイスに通すことで血流の感染処置さえ考えられる」。

Tsenとシニアオーサ、バイオフォトニクス研究センタ、ディレクタ、放射線Michel M. Ter-Pogossian教授、Samuel Achilefu, PhDは、長年、超短パルスレーザの殺菌特性を研究してきた。研究チームは、そのようなレーザがヒトの細胞へ害を与えることなく、ウイルスや普通のバクテリアを不活性化できることを示した。新しい研究では、アリゾナ州立大学マイクロバイオロジー教授、Shelley Haydel, PhDと共同で、その研究を抗生物質耐性菌や細胞胞子に拡張すると結論した。

研究チームは、多剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)向けにレーザをトレーニングし、スペクトルをベータラクタマーゼ産生大腸菌に拡張した。MRSAは、皮膚、肺、他の臓器に感染を起こさせる。E. coliは、尿管感染、下痢、傷口感染を起こさせる。ヒトを悲惨な状態に陥れる能力は共通しているが、MRSAとE. coliは、全く異なるタイプのバクテリアであり、バクテリア界の遠く離れたブランチである。研究チームは、セレウス菌のバクテリア胞子にも注目した。これは、食中毒、食物腐敗の原因であり、加熱や調理で持ちこたえる。

全ての場合で、レーザは、標的細菌の99.9%以上を殺し、その数を1000倍以上減らした。

ウイルスやバクテリアは、超短パルスレーザで励起できる密集したタンパク質構造を含む。レーザは、それらのタンパク質構造を振動させ、最終的に、その分子結合を破壊することで殺す。切れた端は、すぐに何かに再結合するが、多くの場合、それは以前に結合していたものではない。結果は、タンパク質内部およびタンパク質間の誤結合という混乱になり、その混乱は微生物の正常なタンパク質機能を停止させる。

Tsenは、「われわれは、レーザパワーが重要であることを示す論文を以前に発表した。パワーが増加するにともない、バクテリアの不活性化が促進される。しかし、ヒトの細胞を殺すには、それよりも数桁大きなパワーが必要である。したがって、ヒトの細胞に影響を与えることなく病原菌を殺せるようにレーザパラメタを調整できる治療的ウインドウがある」と説明している。

熱、放射線、漂白剤のような化学物質は、物体の殺菌に効果があるが、ほとんどは害がありすぎるのでヒトや生物学的製剤に使えない。細胞に損傷を与えることなくあらゆる種類のバクテリアやウイルスを不活性化することにより、超短パルスレーザは、血液製剤や他の生物学的製剤を安全にする新しいアプローチとなる。

「ヒトあるいは動物ソースから採ったものは何でも病原菌で汚染されている。われわれは、患者に輸血する前に全ての血液製剤を選別する。問題は、われわれが何を選別しているかを知らなければならないことである。70年代、80年代に現れたHIVのように血液感染性ウイルスが現れると、われわれがそれを知る前に、それが血液供給に入り込む。超短パルスレーザは、われわれの血液供給が既知と未知のいずれの病原菌も存在しないことを確実にする方法となり得る」とTsenは話している。

(詳細は、https://medicine.wustl.edu)