August, 18, 2021, Barcelona--IBEC and IDIBAPSの研究者をリーダーとする研究は、光に対する分子反応、PAIを利用して脳状態転移の制御を初めて達成した。その成果は、脳パタン活性への作用に道を開くとともに、脳障害や、鬱病、双極性障害、あるいはパーキンソン、アルツハイマー病などの病気のための光変調(photomodulated)薬剤の開発にもつながる。
脳は、数十億のニューロン間の交信に応じて様々な状態となり、このネットワークは全てのわれわれの知覚、記憶、行動の基盤である。それは、「ブラックボックス」と考えられることがよくあり、医者や研究者によるアクセスは難しい。脳の神経挙動について正確な時空研究をするために利用できる数少ないツールは、限定的だからである。今回、Institute for Bioengineering of Catalonia (IBEC)の研究者は、August Pi i Sunyer Biomedical Research Institute (IDIBAPS)と協力して、その問題に光を当てた。研究チームは、光に反応する分子を使って、脳の神経活動を制御することに初めて成功した。
研究には、Autonomous University of Barcelona (UAB: バルセロナ自治大学)も関与しており、EUの Human Brain Projectの枠組みで行われた。研究は、体内で脳の状態転移を直接光変調する初の方法を説明している。
研究成果は、Advanced Scienceに発表された。それによると、PAI(Phthalimide-Azo-Iper)と名付けられたこの新しい分子は、ムスカリン性コリン受容体を明確に局所的に制御できる。それは、アセチルコリン受容体、脳の神経伝達物質であり、注意または記憶の学習としての複数のプロセスで極めて重要である。
光で脳状態転移を制御
脳状態間の転移、睡眠から覚醒、昏睡からの覚醒は、様々な機能に関わるニューロングループ間で化学的、電気的信号の伝達に基づいている。経頭蓋磁気刺激あるいは超音波刺激法などニューロン活動を変調する現在の技術は、時空間的およびスペクトル的パフォーマンスに限界がある。光遺伝学でニューロンを制御するために光を使う高精度の別の技術があるが、それは遺伝学的操作に依存しており、安全性の理由から人への転用が難しい。
ここでは、研究者は、こうした問題への対処に光薬理学を適用した。それをするために研究チームは、以前にIBEC、PAIで開発された光応答性のある分子を利用した。これにより、脳のニューロンの変調を空間時間的に制御でき、ムスカリン性コリン受容体の結合、制御をする。これらは、神経相互作用と伝達の重要受容体。このアプローチを使うことで、コリン作動性神経支配脳状態の転移を光で制御することができる。ここでは、光応答性となるように化学的にデザインされた薬剤を利用する。
様々な脳状態とそれらの間の転移は、脳機能に関連、脳の活性化パタンに密接に関連している。これは、次に特定神経網の活動とパラメタを反映する。したがって、空間時間制御によるニューロンの操作は、脳状態と挙動の間の関係の決定し、特定挙動に関する神経回路の影響の研究の基本である。加えて、PAIは、薬理学的にムスカリン性コリン受容体サブタイプ、M2に特異的であり、これは、脳波の薬理学研究に刺激的な展望を提供する。
PAIを無傷の脳に適用、また、続いて白色光を適用する時に、研究チームは、神経回路に自然に出現するゆっくりとした振動を変調し、脳の振動周波数を可逆的に操作できる。この新しい化学的に改良されたツールにより、直接照射を利用して脳の睡眠から覚醒状態への転移を制御的にまた非侵襲的に誘発し、詳しく研究することができる。
われわれの脳では、神経活動は、神経モジュレータとして知られる分子、例えばアセチルコリン(ACh)、それがコリン受容体へ結合することで促進される。しかし、グローバルな脳挙動におけるACh受容体を発現する様々な細胞の寄与の把握が完全でない。脳活動の空間時間的に正確な変調を達成するために、PAIのような選択的、光で切り替えられるコリン薬剤の利用が、正確な基礎的神経化学研究の実行、将来の脳治療および刺激の開発に道を開く。
「内因性受容体および中枢神経系のその機能、異なる脳状態間の転移などの光制御は、神経変調技術の成果である」(Dr. Almudena Barbero-Castillo (IDIBAPS))。
(詳細は、https://ibecbarcelona.eu)