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新しい顕微鏡法、生きた脳深部を見る

June, 9, 2021, Zurich--Daniel Razanskyをリーダーとするチューリッヒ大学およびETH-Zurichの研究者は、高分解能画像で脳をライトアップする新しい顕微鏡技術を開発した。これにより,神経科学者は、脳機能と病気をより密接に非侵襲的にを研究することが可能になる。

蛍光顕微鏡は、様々な病気の動物モデルで脳の分子や細胞の詳細をイメージングするためによく利用されているが、強い光が皮膚や頭蓋で散乱されるために、小容量および非常に侵襲的な処置に限られていた。

チューリッヒ大学、ETH-Zurichの研究チームリーダー、Daniel Razanskyによると、「生体の深部でかき乱されることのない環境で生体ダイナミクスの可視化は、生体の複雑な生物学理解にとって重要である。われわれの研究は、成熟マウスの脳で毛細管レベルの解像度で3D蛍光顕微鏡が完全に非侵襲的に実行できることを初めて示している」と説明している。

Opticaでは、研究チームは、拡散光学的局在イメージング(DOLI)という新技術を説明している。これは、散乱が少ない、1000~1700nmの第2近赤外(NIR-Ⅱ)スペクトルウインドウを利用している。

「生きた組織の深部で高分解能光学観察を可能にすることは、バイオメディカルイメージング分野では長年の目標である。深部組織の光学観察でDOLIの超解像度により脳を機能的に洞察することができる。神経活動、微小循環、神経血管連関、神経変性の研究に、それは有望なプラットフォームになる」(Razansky)。

さらに深度改善
新技術では、研究チームは、生きたマウスの静脈内に蛍光微小滴を注入する。血流で散漫な分布ができる程度の濃度である。これらの流れるターゲットを追跡することで、マウスの脳深部の脳微細血管の高分解能マップを構築できる。

「その方法は、背景光散乱を除去し、頭皮や頭蓋に無害で実行される。興味深いことに、深度分解イメージングを可能にする、脳の微小滴の深度についてカメラが記録したスポットサイズの強力な依存性も観察した」(Razansky)。

新しいアプローチは、InGaAsセンサをベースにした最近発表の高効率短波赤外カメラの恩恵を受けている。もう1つの重要なビルディングブロックは、新しい造影剤の利用である。これは、NIR-Ⅱウインドウで強力な蛍光反応を示す、例えば、硫化鉛(PbS)ベースの量子ドットである。

鮮明なイメージング
チームは、組織ファントムとして知られる合成組織モデルで新技術をテストした。これは、平均的な脳組織の特性を模擬したものである。これによりチームは,光学的に不透明な組織で最大深度4㎜で顕微分解能画像を撮れることを実証した。次に、生きたマウスでDOLIを実行。ここでは、脳の微細血管、血流速度と方向が、完全に非侵襲的に可視化された。

チームは,DOLIの解像度向上のために全3次元で正確さを最適化することに取り組んでいる。また、より小さく、強力な蛍光強度を持ち、生体内でも安定的な、改善された蛍光剤も開発している。これは、達成可能なSNRとイメージング深度に関して、DOLIの性能を著しく強化することになる。

Razanskyは、「DOLIは、生物の蛍光イシメージングの強力なアプローチになる、以前にはアクセスできない深度と分解能のイメージングである。これは、蛍光顕微鏡と断層技術の生体内適用性を著しく強化するものである」とコメントしている。

(詳細は、https://ethz.ch)