May, 24, 2021, Geneva--UNIGEの研究者は、網膜の光応答は、眼が感知する光強度とともに、その一時的形状および、色が組み合わされる順序に依存することを示した。
視覚は、複雑なプロセスである。多くの分野、物理学、生体化学、生理学、神経学などで解釈されている。網膜が光を捉え、視神経が電気刺激を脳に送り、最終的に画像の知覚が生まれる。このプロセスは時間がかかるが、最近の研究は、視覚の第1段階、光の知覚自体は、極めて速いことを示した。しかし、この決定的な段階の分析は、実験室の溶液内の分子で行われた。UNIGEの研究者は、EPFL、ジュネーブ総合病院(HUG))と協力してマウスでその実験を再現した。生きた組織で光の処理をその複雑さ全てで観察するためである。この非侵襲的研究は、光エネルギーだけが網膜の反応を規定するのではないことを示している。その形状、短いあるいは長い形状も、画像形成のために脳に送られる信号に影響する。この発見は、Science Advancesに発表され、視覚、診断、新たな治療可能性に新しい研究領域を開く。
視覚の細胞メカニズムは、複数の分野の協働によりうまく調べることができた。「眼では、視覚の第1段階は、光と接触して形状を変える小さな分子、網膜に基づいている」と論文の筆頭著者、UNIGE応用物理学部研究者、Geoffrey Gaulierは説明している。「網膜がその幾何学的形状を変えると、複雑なメカニズムが始動し、視神経に神経刺激が生成される」。
眼が光を知覚する瞬間と、脳がそれを解釈する瞬間の間、このプロセスは時間がかかる。物理学者は、そのチェーンの最初の分子、網膜を見て、その形状変化にかかる時間を調べる。この分子をキュベットに分離し、それにレーザパルスを照射して、その反応速度をテストした。驚いたことに、その分子は約50fsで反応した。「これは非常に速いので、このスピードが、分離した分子だけで達成されたのか、あるいは生物にその全ての複雑さにおいて同じスピードがあるのかどうか疑問に思った」とUNIGE物理学、Pierre Wolfは話している。
光強度と形状が眼の感度を定める
視覚のこの第1段階を詳細に研究するために、研究者は、生物学者、UNIGEの科学と医学学部教授Ivan Rodriguez and Pedro Herreraを招いた。マウスにコンタクトレンズをつけ、網膜電図を実施。「この方法は、完全に非侵襲的であり、視神経に送られる信号の強度を計測することができる」とJean-Pierre Wolfは続ける。光が網膜に当たると、電子増幅器により、角膜で電圧を観察することができた。その結果、分かったことは、この段階は、分子が分離されるの時と同様、高速で起こったと言うことだった。
チームは、経時的にパルス形状を変えて研究を続行。「われわれは常に同じエネルギー、同じ数のフォトンを送るが、光パルスの形状は変える。時々パルスは短く、時には長く、時にはスライスされているなど」とGeoffrey Gaulierは説明している。これまでは、眼によって捉えられるフォトンの数だけが役割を担うと考えられていたので、実際、形状を変えることは、網膜の反応に変化を誘発しないはずである、」とジュネーブの研究者は説明している。結果は、EPFLのUrsula Röthlisbergerグループの助けを借りて説明できた。
研究者は、たとえ光スネルギーが同じでも、眼が光の形状に依存して同じように反応しないことを観察した。「眼の反応は、色が変化する順序に従って異なる。例えば一時的虹では、たとえ互いに極めて速く続いてもである」とJean-Pierre Wolfは続けている。要するに、網膜は、多かれ少なかれ光形状に依存して光が存在すると信じいるが、一方、エネルギーは同じであるので、その反応によって脳に送られる電流は強かったり、弱かったりする。
スイス国立科学財団Swiss National Science Foundation (SNSF) Sinergiaプロジェクトの関連で実施されたこの発見は、新たな研究分野を開くものである。「光の形状が知覚で果たす役割が分かったのだから、この新しい知見を使って眼の働きを変えることができる」とJean-Pierre Wolfは提案している。診断の新たな可能性の研究、弱視の可能な処置が開発できるようになる。
(詳細は、https://www.unige.ch)