April, 27, 2021, Washington--ミネソタ大学の研究者は、頭部装着(ヘッドマウント)微小顕微鏡を開発した。これを使って、自由に活動するマウスの大脳皮質外側全体から活動をイメージングできる。インプラント可能なシースルー頭蓋と組み合わせると、その新しい顕微鏡はマウスの脳活動を300日以上捉えることができる。
マウスは、脳研究に使われることがよくある。人間と同じ脳構造と接続性を持つからである。その新しい顕微鏡、mini-mScopeは、大脳皮質の複数の領域から神経活動が、行動、認識、知覚にどのように影響するかを研究するための重要な新ツールとなる。
ミネソタ大学のMathew L. Rynesは、OSA Biophotonics Congress: Optics in the Life Sciencesで研究成果を発表した。
研究者は、脳の皮質の特殊領域における神経活動が行動にどのように寄与するかの理解で著しく前進したが、多数の皮質領域から、活動を瞬時に調べることは難しかった。マウスでは、刺激に反応して動く1本のヒゲでさえ、複数の皮質領域での情報処理に関与している。
「mini-mScopeにより、背側皮質のほとんどが、自由で制限のない活動中のイメージングが可能になる。これにより神経科学者は、複雑な行動中に脳を総体的に調べることができ、また皮質領域が活動中にどのように相互作用するかも理解できた。これにより、病気状態、外傷性脳損傷、中毒で接続性がどのように変化するか理解できるようになる」とRynesは説明している。
その新しいmini-mScopeは、カルシウムイメージングに使用できる蛍光顕微鏡である。これは脳の電気活動をモニタするために一般的に使用されている技術。そのヘッドマウントデバイスは、ほぼ細胞レベルで画像を撮るので、皮質全体の領域間の接続性を研究することができる。
研究チームは、照明用LEDs、焦点調整用ミニレンズ、画像をトラップするsCMOSカメラを使って、微小顕微鏡を作製した。それには、連結磁石が含まれており、形態学的に現実的な3Dプリントされた透明ポリマ頭蓋、チームが以前に開発したSee-Shellsに簡単に取り付けることができる。マウスにインプラントすると、See-Shellsは、顕微鏡の長期的機能を可能にするウインドウを作る。以前の実験では、マウスはSee-Shellsをインプラントして1年生きた。
チームは、mini-mScopeの利用を実証した。右目に対する視覚刺激、右後肢への振動刺激、右ヒゲへの体性感覚刺激に反応するマウス脳活動のイメージングにそれを使用した。顕微鏡を頭部装着したマウスが他のマウスと相互作用する際の脳の機能的接続マップを作成した。マウスが社会的活動を行っているときには、皮質内接続性が増加することも確認した。
「われわれのチームは、皮質の大きな部分に、高い空間的時間的分解能でアクセスし、相互作用できる一連のツールを作っている。この研究は、mini-mScopeが、自由に行動するマウスにおける機能接続性を研究するために使えることを示しており、それはこのツールキットへの重要な貢献である」とRynesはコメントしている。
研究チームは現在、mini-mScopeを使い、新しい空間の探査など様々な行動パラダイムで皮質接続性がどのうよに変化するかを研究している。また、協力者とともにmini-mScopeを使って、マウスが難しい運動課題を学習するときに皮質活動がどう変わるかも研究している。