March, 19, 2021, Lausanne--EPFLエンジニアチームは、目の見えない人々の視力を部分的に回復できる技術を開発した。
EPFL工学部ナノエンジニアリングで、Medtronic ChairであるDiego Ghezziは、視力の回復を研究の中心にすると発表した。2015年から同氏のチームは、網膜インプラントを開発してきた。これは、カメラを装備したスマートグラスとマイクロコンピュータで動作する。「われわれのシステムは、網膜細胞を刺激する電極を利用することで、目の見えない人々に人工視力を提供できるように設計されている」(Ghezzi)。
スマートグラスに埋め込まれたカメラが、装着者の視界にある画像を捉え、アイグラス末端の1つにあるマイクロコンピュータにそのデータを送る。マイクロコンピュータは、そのデータを光信号に変え、それらは網膜インプラントの電極に転送される。次に電極は、網膜を刺激する。装着者は簡素化された画像の白黒バージョンを見る。この簡素化されたバージョンは、網膜細胞が刺激されると顕れる光の点で構成されている。しかし、装着者は、形や物体を理解するために、多数の光の点を解釈できるようにならなければならない。「夜空に星を見たとき、特殊な星座を認識するようなものである。目の見えない患者は、われわれのシステムで類似の何かを見るようになる」とGhezziは話している。
現在はシミュレーションを実施
唯一の問題点は、そのシステムが、まだ人間でテストされていないことである。研究チームは、まずその結果を確実にする必要がある。「われわれは、まだデバイスを人間の患者に埋め込む権限がない、医学的承認を獲得するには時間がかかる。しかし、一種の回避策として、それを仮想的にテストするプロセスを考えついた」(Ghezzi)。もっと具体的に言えば、エンジニアは仮想プログラムを開発した。これにより、そのインプラントで患者が見るものをシミュレートできる。その成果は、Communication Materialsに発表された。
視界と解像度
視覚を計測するするために2つのパラメタが使用される。視界と解像度。したがってエンジニアは、そのシステムの評価に同じこれら2つのパラメタを使った。開発した網膜インプラントは、10500の電極を含んでいる、電極の各々が光の点を生成する働きをする。「これが多すぎる電極であるか、十分でないかは確信はなかった。再生された像が理解しにくくならないように、適切な数を見つけなければならなかった。患者が、相互に接近したその2つを区別できるように、ドットは十分に離れていなければならない。しかし、十分な画像解像度が得られるようでなければならない」とGhezziは説明している。
エンジニアは、各電極が光のドットを信頼度よく確実に生成するようにしなければならなかった。「われわれは、2つの電極が、網膜の同じ部分を刺激しないことを確認したかった。だから、網膜神経節細胞の活動の記録に関わる電気生理学的テストを実施した。結果は、各電極が、網膜の異なる部分を活性化するということを裏付けた」と同氏は説明している。
次のステップは、10500の光ドットが十分な解像度となるかどうかを調べることだった。そこに仮想現実(VR)プログラムが登場したのである。「われわれのシミュレーションは、選択したドット数、つまり電極数が良好に機能することを示した。鮮明度に関しては、それ以上の数を用いても患者には実際的なメリットはない」(Ghezzi)。
エンジニアは、一定の解像度で、異なる視野角のテストも実施した。「5°で始めて、視野角を45°まで広げた。飽和点が35°であることが分かった」(Ghezzi)。これらすべての実験は、そのシステムの機能をこれ以上改善する必要がないことを示していた。また、臨床試験の準備ができていることも示している。しかし、チームは、その技術が実際の患者にインプラントできるまでに少し待たなければならない。現状は、視力の回復は、サイエンスフィクションの世界にとどまっている。
(詳細は、https://actu.epfl.ch)