January, 15, 2021, Groningen--1999年、フローニンゲン大学( University of Groningen)の有機化学教授、Ben Ferigaは、初の光駆動分子モーターを開発した。これら微小モーターは,あらゆる種類のナノテクアプリケーションで利用できる、例えば薬剤デリバリ。しかし、それらはUV光駆動であり、UV光は有害である。
研究者は、代わりに近赤外光を使う方法を探してきたが、これまでのところ、全て成功に至っていない。フローニンゲン大学の研究チームは、今回、近赤外光からエネルギーを吸収するアンテナを設計した。このアンテナを,モーター分子に取付、それがモーターを動かす軸にエネルギーを直接転送する。結果は、近赤外光駆動モーター分子であり、これは医療アプリケーションに一歩近づく。
光制御分子モーターは、機能材料の作製、自律動作に使える。あるいはコマンドに反応して薬剤を内包した小嚢を開けるシステムで使える。フローニンゲン大学の化学者は、モーター分子にアンテナを加えることで、近赤外光で効率的に動作する回転モーターを設計した。その設計と機能は、Science Advancesに紹介された。
高エネルギーの1フォトンの代わりに、2つの低エネルギーフォトンを直接受け取れるモーター分子の採用は、成功しなかった。Feringa研究所の研究者が今回、異なるアプローチを試したのは、それが理由である。共有結合により、モーター分子は、「アンテナ」に結合され、アンテナは2つの近赤外フォトンを吸収できる。アンテナの結果としての励起は、次に分子のモーター部分に移される。
Feringa 研究所のLukas Pfeifer(現在、EPFL)は、「このシステムが機能するには,アンテナのエネルギーレベルとモーターを綿密に調整しなければならなかった」と説明している。これは、アンテナが運動に供給する正確なエネルギーの量を必要とする分子モーターバージョンを設計すると言う意味である。「さらに、アンテナが、モーターの回転を邪魔することなく取り付けられるようなリンカーが必要だった」。
フローニンゲン大学超高速分光学教授、論文の著者の一人、Maxim Pshenichnikovは、「これは励起状態の直接移転である。ギターの2本の弦で、一方を弾くと2本の弦が共鳴するのと似ている」と説明している。アイデアは、非常にシンプルだ。「しかし、化学的設計が些細なことでなかったことは、間違いない」。
モーターを動かす複雑な成り行きの連続が、ピコ秒から数分の非常に広い時間範囲で起こる。その相違する時間領域を、Pfeiferが、NMRを使い、また、Ph.D学生Nong Hoangは超高速分光法を使って調べた。最初にアンテナが2つの近赤外フォトンを捉えた。これに、モーターを始動させるエネルギー移転が続く。幸い、その設計は非常に効率的に機能した。
次のステップは、モーター-アンテナ複合構造を簡素化することである。それにより、さらなる機能を追加することになる。新しいモーター分子の可能なアプリケーションは、生物学的システムで小嚢の内容を放出する引き金としての機能である。
(詳細は、https://www.rug.nl)