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細胞のリプログラミングを追う光技術

January, 12, 2021, 広島--理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター先端バイオイメージング研究チームのアルノ・ジェルモン研究員、渡邉朋信チームリーダー(広島大学原爆放射線医科学研究所教授)らの共同研究グループは、培養細胞にレーザ光を照射したときに散乱する光(ラマン散乱光)を利用し、分化細胞からiPS細胞へのリプログラミング過程にある細胞のリプログラミング状態を非染色・低侵襲的に評価する手法を開発した。

この手法は、タンパク質や遺伝子の発現を観察する従来法に比べて簡便・高速であり、今後の幹細胞研究の強力なツールになると期待できる。

分化した細胞がリプログラミングを経て多能性を獲得する際、細胞のトランスクリプトーム、プロテオーム[3]、メタボロームには大きな変化が生ずる。このような変化を観察し記録することは、リプログラミング現象の解明や、最終的なiPS細胞の品質を評価する上で重要な情報となるが、検査に要する手間や時間、コストが課題。

これら技術を代替する迅速かつ低コストなiPSリプログラミング評価技術の実現に向けて、共同研究グループは、細胞にレーザ光を照射した際に得られるラマン散乱光が、細胞の状態を反映したスペクトルを持つことに着目した。マウスES細胞に由来する分化細胞、リプログラミング中の細胞、iPS細胞それぞれのラマン散乱光を解析した結果、細胞の分化状態やリプログラミング状態を単細胞精度で判別できることが分かった。

研究成果は、科学雑誌『Analytical Chemistry』に掲載された。

(詳細は、https://www.hiroshima-u.ac.jp)