January, 6, 2021, 徳島--蛍光物質に瞬間的な光を照射すると、発生した蛍光は直ちには減衰せず、その蛍光物質特有の減衰時間(蛍光寿命)をもって減衰する。この蛍光寿命を観測し、試料をマッピングする手法が蛍光寿命顕微鏡である。蛍光寿命は、実験条件に依存しないので高い定量性が得られ、細胞内の蛍光分子の環境変化などを高感度に検出することができる。しかし、蛍光寿命顕微鏡は点計測に基づいているため、画像取得には焦点位置の機械的走査(スキャン)が必要となり、高速な画像取得が制限されていた。
徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所の水野孝彦元特任助教・安井武史教授らと宇都宮大学オプティクス教育研究センターの山本裕紹教授の研究グループは、上記の課題を解決するため、デュアル光コムを光源に用いた蛍光顕微鏡を開発した。
研究では、光コムの「超離散マルチ光チャンネル性」という光周波数モード列(注3)が等間隔に並ぶ特徴に着目し、ひと組の光コム(デュアル光コム)による光の輪唱(光ビート)と、光波長/空間/電気周波数の多次元変換を融合することにより、蛍光寿命と蛍光強度の顕微画像を焦点走査無く(スキャンレスで)高速に一括取得できる手法を開発した。この手法により、細胞内での分子の広がりや動きをつぶさに測定することが初めて可能になり、生きた細胞の動態(ダイナミックス)の定量的観察が必要なライフサイエンス研究への応用が期待される。
研究成果は、2021年1月1日14時(米国東部標準時)にアメリカ科学振興協会(American Association for the Advancement of Science)の電子ジャーナル「Science Advances」で公開される。
(詳細は、https://www.tokushima-u.ac.jp)