June, 10, 2014, Cambridge/Boston--ハーバード主導の研究チームが、体内の幹細胞に組織再生をさせるためにローパワーの光が使えることを初めて実証した。
研究チームは、ローパワーレーザを使って人の歯の幹細胞に象牙質を作らせた。さらに、関連する分子メカニズムを説明し、多数のラボモデルや動物モデルを使ってこの技術の能力を実証した。
調整タンパク質、いわゆる成長因子のような、生物学的活性分子が、幹細胞を違うタイプの細胞に分化することができる。現在の再生への取組は幹細胞を身体から分離し、実験室でそれを操作して、身体に戻す。これを臨床移転するには、多くの規制的、技術的障害に立ち向かうことになる。しかし、工学・応用科学ハーバード校バイオエンジニアリング教授、David J. Mooney氏のアプローチは違うものであり、同氏は医師が実用的に利用するのは簡単だと言う。
「われわれの治療法は、身体に何ら新しいものを導入しない。また、レーザは医療でも、歯科でも普通に使われているので臨床移転へのハードルは低い。われわれが、歯を入れ替えるのではなく、再生することができれば、この分野で大きな前進となる」。
研究チームは、レーザ治療の再生効果に関与する正確な分子メカニズムを明らかにするために一連の培養系実験を行った。歯の幹細胞の象牙質への転換を引き起こす際に重要な役割を果たすのが形質転換成長因子β-1(TGF-β1)と言われる、どこにでもある制御細胞タンパクであることが分かった。TGF-β1は、分子に活性化されるまでは潜在形で存在する。
ここに化学的ドミノ効果があることを研究チームは確認した。用量依存的にレーザはまず活性酸素種(ROS)を誘導する。ROSは、細胞機能で重要な役割を果たす酸素を含んでいる化学的活性分子。このROSが潜在TGF-β1錯体を活性化し、順々に幹細胞が分化して象牙質になった。
研究チームは、次に人間での臨床試験を考えている。
(詳細は、www.seas.harvard.edu)