May, 15, 2020, Washington--WHOによると、蚊が媒介するマラリア、デング熱、黄熱病などの病気は毎年、数十万人の命を奪う。新しいローコストイメージングシステムは、病気を媒介する蚊の種類の追跡を容易にし、よりタイムリーな標的反応を可能にする。
「われわれのもののようなリモートシステムは、所定のエリアで蚊のモニタに必要な労力を劇的に減らすことができるので、モニタリング力を著しく高めることができる。蚊についてのデータを多く提供できれば、発生を素早くとらえて、より多くの生命を救うことができる」とジョンホプキンス大学、研究チームリーダー、Adam Goodwinは説明している。
研究成果は、Biomedical Optics Expressに発表された。論文では、蚊のトラップ内の画像を転送するシステムを説明している。昆虫学者は、翅のパタンと鱗粉の色などの特徴から、蚊が病気を媒介する種類かどうかを十分に区別できる。この情報を使って、その種類に対してベストに機能する介入を計画することができる。
「その新システムは、IoTデバイスの古典的なアプリケーションである。最終的に、コンピュータビジョンアルゴリズムと組み合わせて自動的に種類を判定し、公共の健康システムにその情報を提供する」とGoodwinは話している。
リモートイメージングトラップの開発
蚊が媒介する病気が問題になる世界の多くの地域で、どの種類がどの程度の数存在するかを把握するには、継続的に複数の場所で蚊を捉える必要がある。作業者は、地域を車で回り、降りて週に数100のトラップをピックアップし、その種類をラボに持ち帰り、顕微鏡で特定しなければならない。
「われれの新しい光学システムを従来の蚊トラップ内に設置すると、蚊の種類の豊富で多様な分布を遠隔監視することができる。イメージングの利用が特に魅力的である。画像品質が高ければ、画像からいくつかの蚊が直ちに特定される」とGoodwinは説明している。
システム設計で研究チームは、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)を正確に特定できることに集中した。ネッタイシマカは、ジカ熱、デング熱、チクングンヤ熱、黄熱病などを蔓延させる。この侵入生物種は、アフリカ原産であるが、北米、ヨーロッパ、アジアを含む世界の多くの地域に定着している。研究チームによると、同じアプローチは、捉えて信頼性良くイメージングできる限り、他の昆虫にも適用可能である。
市販調達できるオブティクスとカメラセンサを使い、チームは、光学セットアップを最適化し、多くの蚊を直ちに撮像する必要性と、蚊の種類を特定するために細部を見ることができる能力とのバランスをとった解像度を達成した。
「われわれの新システムは、アクセスが難しい地域、他国から侵入種が持ち込まれる通関手続商港におけるネッタイシマカのモニタリングで特に役立つ。また、ネッタイシマカの局所的数をすでにモニタリングしている地域では、現在の監視作業を拡張することもできる」とGoodwinは話している。
ほとんどの場合、公衆衛生システムは、分ごとではなく、日ごとあるいは時間ごとに蚊の数、タイプに変化があるかどうかを判定する必要があるだけだ。つまりカメラセンサは、1日にせいぜい数回スイッチが入ればよいことを意味する。これはインターネット接続デバイスでは実用範囲で消費電力を維持することになる。
システムのテスト
その新システムをテストするために研究チームは、デジタル顕微鏡画像と、リモートイメージングシステムの画像から昆虫学者の種を分類する能力を比較した。画像タイプ間で昆虫学者の能力に大きな差はなかった。昆虫学者は、顕微鏡画像またはリモートシステム画像のどちらか一方で、種の分類がうまくいかなかったが、属の分類では好成績だった。
「昆虫学者は、通常、本人が直接試料を用意して、顕微鏡下でピンセットでそれを操作するので、画像から種を特定することに慣れていない。しかし、画像から蚊を分類するためにCNNsを使う最近の作業は極めて有望である」とGoodwinは話している。
研究チームは、引き続きリモートトラップの最適化を行い、コンピュータビジョンアルゴリズムとインターネット接続をシステムに組み込む計画である。「これにより種の情報を直接公衆衛生システムに送って判定することができる。これが、システムが実際に輝くところである」と同氏はコメントしている。