May, 7, 2020, Pasadena--レーザ光と超音波を利用して生体を構成する物質を調べる技術は、医療に多くのアプリケーションがある。臓器から血管、腫瘍まで、あらゆるものを見せることができるからである。
CaltechのLihong Wangは、その分野のパイオニアで、様々な光音響イメージングを開発した。リアルタイムで動く臓器を示し、内臓の3D画像を展開し、ガン細胞と健全な細胞の区別さえできる。
医療工学・電気工学Bren教授、Wangは、PATER (Photoacoustic Topography Through an Ergodic Relay)により、光音響イメージング技術をさらに先へ進めた。PATERは、この種のイメージングに必要な装置を簡素化することを目的にしている。
光音響イメージングは、レーザ光パルスを調べる組織に送り込むことで機能する。光が組織の分子に当たると、分子が振動して超音波が生じ、組織内を進んで最終的に、組織表面に押さえつけられたトランスデューサという一種のセンサで捉えられる。トランスデューサからの信号はコンピュータで処理されて、組織の内部構造の画像が生成される。
このシステムが鮮明な画像を生成するには、多数のセンサが必要になる。その技術の1回繰り返しで、一度に組織に押しつける必要のあるセンサは512となる。
「表面の全点がトランスデューサアレイでカバーされなければならない、それは構築にコストがかかる。われわれはシステムの低コスト化、ウエアラブルについて考えている。アレイをウエアラブルにできるほどコンパクトにするのは困難」とWangは言う。
少ないセンサを利用して安価でコンパクトなシステムを作ると、画像生成のためのデータが十分に得られない。研究チームは、回避方法、いわゆるアーゴディックリレイ(ergodic relay)を見いだした。
コンピューティングでは、データ転送に主に2つの方法がある。シリアルとパラレルだ。シリアル伝送では、データは通信チャネルでシングルストリームで送られる。パラレル転送では、複数のデータピースが多数の通信チャネルを利用して同時に送られる。
512のセンサで研究チームが設計したシステムは、多数のキャッシュレジスタを利用するのと同じである。全てのセンサが同時に機能しており、レーザパルスが生成する超音波振動のデータの一部を個々のセンサが取得している。
システムの超音波振動は短いバーストで入ってくるので、1個のセンサが、その短い時間に全てのデータを収集しようとすると、圧倒されてしまう。アーゴディックリレイを利用する理由がここにある。
アーゴディックリレイは、音が共鳴する一種のチャンバ(箱)。超音波振動がそのアーゴディックリレイを通過すると、振動は時間内に広がる。
Wangによると、PATERシステムのこの第1バージョンは、2D画像を生成することはできるが、他の光音響システムのように3D画像は、まだ生成できない。そのシステムが成熟すると、単に組織や身体構造のイメージングの他に他の医療目的にも役立つ。
「グルコースが吸収する光波長を使えば、それを糖尿病患者の血糖値のセンシングにも使える。脂質パネルにも、恐らく使える。これらの分子にシステムを調整すれば、あらゆる種類の化学物質をセンシングできる」と同氏はコメントしている。
(詳細は、https://www.caltech.edu/)