February, 7, 2020, Santa Cruz--神経回路研究への新たなアプローチは、微小電極や、遺伝子組換えを必要とする蛍光ベースの光技術の両方にメリットがある。
UC サンタクルズ(Santa Cruz)の研究チームは、ニューロンや他の興奮細胞の生体活動をモニタするための超高感度ナノスケール光プローブを開発した。この新しい読出し技術により研究者は、多数の個別ニューロンを同時にモニタすることで、神経回路の機能の仕方を研究することができる。また、精度と機能性が飛躍的に高められた広帯域脳と機械のインタフェースへもつながる。
ニューロンの電気活性モニタリングは、従来からマイクロエレクトロードを使って行われているが、これらは大規模実装は困難であり、空間分解能が制限される。加えて、読出しに必要な電子配線が、微小電極の主要な制約になる、とUCSCのBaskin工学部電気・コンピュータ工学准教授、Ali Yanikは説明している。
「電子配線の非常に制限された帯域は、正に電子の性質によって生まれるボトルネックである。われわれはフォトンに目を向けた。光は、多重化と情報伝達能力を数十億倍強化するからである。これは通信業界が光ファイバへ移行したのと同じ理由である。バイオエレクトリック信号をフォトンに変換することで、われわれは大きな帯域の神経活動を光で伝達することができる」とコメントしている。
同氏の研究室は、ノートルダム大学(University of Notre Dame)のチームと協力して、電気生理学的信号の超高感度光モニタリングを可能にする細胞外ナノプローブを開発した。他の光モニタリング技術は、蛍光分子を細胞膜に挿入するために遺伝子改変を必要とするが、これは人間では利用できない。
Yanikのアプローチは、細胞外微小電極技術と同じである。ただし、読出し機構は光であり、プローブはナノスケールサイズである。加えて、それが生み出す信号は著しく高輝度で、SNRは蛍光ベースのプローブよりも高い。
「神経回路を切断し、電気生理学的信号を解読するために光の比類のない多重化と情報伝達を利用することは、ほぼ50年前から神経科学者の目標だった。われわれは、ついにそうする方法を見いだしたかもしれない」とYanikは話している。
研究成果、Science Advancesに発表された。
広範なアプリケーション
その技術は、まだ開発の初期段階であるが、Yanikによると、それは幅広いアプリケーションへの扉を開くものである。究極的には、強力な脳と機械とのインタフェースにつながり、身体障害者のための脳で制御する新しい補綴技術の開発が可能になる。
この光ナノプローブは、PEDOTという生体適合ポリマと結合した、新しい金属アンテナ構造をベースにしたナノスケールデバイス(径100 nm以下)である。このポリマは、「エレクトロクロミック」、つまりその光学特性が局所的電界に反応して変化する。アンテナは「プラズモンナノアンテナ」、無線アンテナのと同じように、光と物質のナノスケール相互作用を利用する。その結果が、「電子-プラズモンナノアンテナ」であり、非常に高感度に局所的電界動力学を高信頼に光検出する。
「電子-プラズモンナノアンテナには、電界に反応して変化する共鳴周波数がある。それに光を照射する時に見ることができので、遠隔からその信号を読むことが可能である」とYanikは説明している。
研究チームは、電子-プラズモンナノアンテナの特性を評価し、最適化するために一連のラボ実験を行った。次に、心筋細胞(心筋細胞は、ニューロンのように、電気インパルスを生成できる)の培養における電気生理学的信号をモニタする能力をテストした。その結果は、心筋細胞の電気的活性をリアルタイム、高SNR、オールオプティカル検出を証明した。
遺伝子操作不要は別にして、この技術の蛍光プローブに対する利点は、必要とされるのが非常に低い光強度であること、つまり蛍光電圧プローブに用いられる一般的な光強度よりも2、3桁低い。さらに、蛍光分子は漂白の影響を受けやすく、破壊的な酸素フリーラジカルを生成する。
Yanikは、その光ナノプローブを利用して、人を含む生きた動物の神経活動のモニタで、2つのアプローチの可能性を指摘している。プローブを光ファイバとともに柔軟な生体適合インプラントに組み込む、あるいはコロイド溶液に漂うナノ粒子として合成する。プローブが特殊な細胞タイプと結合できるように付着させた表面タンパク質を組み込む。
「溶液ベースのシステムで、それを血流あるいは臓器に注入できる。また、モニタしたい特殊な細胞タイプにナノプローブを付着させる。これは始めたばかりであるが、立脚する基盤があると考えている」(Yanik)。
生きた動物で神経プローブを使用するための考慮すべき重要な点は、体内で異物に対する固有の免疫反応である。以前の研究は、生体適合PEDOTポリマで被覆した電極が、微細加工神経人工デバイスの長期パフォーマンスを改善したことを示している。インプラントのサイズも、免疫反応に影響する。
「重要な形状は、10~15µmである。最近の研究では、より小さなサイズのインプラントが、固有の免疫反応を飛躍的に減らすことがわかっている。この意味で、われわれのナノスケールPEDOT被覆プローブは、長期動作に特に有用である」とHabibは話している。