November, 29, 2019, Amsterdam--医療イメージングセンター(グロニンゲン医科大学)他の研究者コンソーシアムは、全く新しい分子フォトスイッチを開発した。これは、これまで達成不可能と考えられていた多くの「至高の目標」要求を満たすものである。研究成果は、Nature Communicationsに発表された。
われわれの巨視的世界では、必要に応じてデバイスを切り替えることに慣れている。そのような制御は、マクロの世界では有益であるが、分子スケールでは至高の目標の1つでもある。分子フォトスイッチは特別な関心をもたれている。例えば、必要なところで、必要な時に薬剤を活性化させる非侵襲的で局所的な手段が可能になるからである。そのようなスイッチは存在するが、理想にはほど遠い。その動作に、無害な可視光ではなく有害なUV光が必要になるからである。これは、医療設定の視点では、人目を引くものである。さらに、それらは一つの状態から他の状態へ排他的にスイッチできない、また通常、人体の生理学的条件下では機能しない。吸収バンドは、スイッチングに光のどの波長が必要かを記述している。’on’ と ‘off’ 状態の吸収バンドがオーバーラップするとき、2つの状態間のスイッチングは、同じ波長の光を必要とするが、それは効果がない。しかし、吸収バンドが十分に分離されていると、’on’ と ‘off’ 状態の切り替えは、異なる波長で高い特異性、効果で実施できる。そのような要件を満たす分子スイッチは、非常に求められているが、今日まで、誰も適切な設計を実現できなかった。
両世界のベスト
チオインジゴやアゾベンゼン(Thioindigo and azobenzene)は、分子スイッチで広範に使用されている2つの化学モチーフであるが、前に触れた欠陥に悩まされている。フローニンゲン大学医療センター(UMCG)のDr. Wiktor Szymanskiは、これら2つの融合がフォトスイッチ(光電スイッチ)としても機能すると気づいた。また、交雑と同様、その「パレント」(親)と比べて、特性を改善している可能性が高い。UMCGのPhD学生、Mark Hoorensは、「しかし、初期の結果には、非常に落胆した。それを照射したとき、吸収スペクトルにどんな影響も見られず、何も起こらないようだった。したがって、われわれは、この複合物に対する興味を失い、他の研究に進んで行った」とコメントしている。同氏は、イミノチオラン(ITI)合成/化合物を合成し、それをスイッチしようとしていた。
速くなるように見える
2017年、Groningenで組織された光薬理学国際シンポジウムで、同グループは、アムステルダム大学分子フォトニクスグループの研究者と研究成果を議論した。その議論に基づいて、時間分解能が優れた、アムステルダム大学の施設を使い照射実験を繰り返す価値があるとの結論を得た。新しい実験は、驚くべき結果を生み出した。「完全分離の吸収バンドが100nmからITIの定常状態吸収バンドの赤までに、寿命約10~20msで現れるのを確認した」とMark HoorensとMichiel Hilbersはコメントしている。「パレント」の1つはUV領域で吸収し、帯域が分離されているが、他方のパレントは可視光域で吸収するが、帯域分離はよくない。その新しいスイッチは、両方のベストを持っている。そのような特性は、フォトスイッチではこれまでに観察されたことはない。追加実験で、ITIは、研究者たちが探していた完全可視光スイッチであることが確認された。非線形分光学ヨーロッパ研究所のdr. Mariangela Di Donatoの研究室で行われたフェムト秒およびピコ秒タイムスケール実験により、さらなる反応機構研究が可能になった。Mariangelaによると、これらの研究から、数100fs秒の超高速タイムスケールでITIがスイッチすることが明らかになった。これは、光が当たると、われわれの目の視覚色素が非常に速くスイッチするのと同じである。
量子科学計算
最終確認は、dr. Adèle Laurent (University of Nantes) および dr. Miroslav Medved’ (Palacky University in Olomouc)が実施した量子化学計算によって行われた。これらの計算は、2つの光異性体の吸収極大を予測した。これは実験的に観察されたものと非常によく似ていたが、観察された寿命に適合した原型へのスイッチバックの障壁でもあった。「もっとよいことは、計算によってわれわれは、ユーザの特定要件を満たすには、ITIをどのように改良すればよいかを予測できることである」とLaurentとMedvedはコメントしている。
ITIの作用
Mark Hoorensは、これまでに複数の多様なものを合成し、アムステルダム、フローレンス、ナント、オロムクで、さらに特性化された。これらの研究から、ITIは信じられないほど多用なスイッチであることが明らかになった。生物学的な実験を含む、幅広い実験条件で運用できる。また、調整は比較的容易な特性を持つことが分かった。
(詳細は、https://www.umcg.nl/)