October, 21, 2019, 東京--東京大学大学院理学系研究科の河野優特任助教らは、アブラナ科のモデル植物シロイヌナズナの葉に、野外変動光を模した光合成駆動光に加えて遠赤色光を照射したときの光合成応答を解析した。その結果、遠赤色光の補光によって光合成速度が増加すること、遠赤色光の効果は光の強さが頻繁に変化する変動光環境下で顕著に見られることが明らかになった。
単独では光合成を駆動しない遠赤色光は、光合成の調節に深く関わっており、光エネルギーや電子の渋滞緩和のための交通整理の役割を果たしているのである。今回の結果は、食料不足問題の解決に向けた光合成能増大作物の創出に新たな可能性を与えるものである。
陸上植物は波長400 – 700 nmの青色〜赤色の領域の光、つまり可視光領域の光を吸収して光合成を行うので、この波長域の光は光合成有効放射とよばれる。一方、人の目には見えないとされる遠赤色光とよばれる700 – 800 nmの領域の光は、植物の発生や形態形成に大きく作用するが、光合成との関連ではその作用はほとんど研究されてこなかった。確かに、700 nmより長波長の単色光はほとんど光合成を駆動しない。一方、太陽光は遠赤色光を豊富に含む。また、植物の浴びる太陽光の強度は、雲による遮蔽や、上部に存在する植生によって、頻繁かつダイナミックに変化する。
研究成果は、Plant and Cell Physiologyに発表された。