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理研、SACLAとSPring-8の光で生体分子複合体のナノ構造を解明

May, 8, 2014, Wako--理化学研究所(理研)と英国リバプール大学は、X線自由電子レーザ(XFEL)光と高輝度放射光を使い、結晶化が困難な生体分子複合体「RNA干渉 (RNAi) マイクロスポンジ」の3次元ナノ構造を観測することに成功した。
これは、リバプール大学のマーカス・ギャラガー・ジョーンズ博士課程大学院生(前・理研放射光科学総合研究センター(RSC) ビームライン研究開発グループ イメージング開発チーム 国際プログラム・アソシエイト)と、RSC・XFEL研究開発部門ビームライン研究開発グループイメージング開発チームの宋昌容(ソン・チャンヨン)チームリーダーらの共同研究グループの成果。
現在、タンパク質などの生体分子の構造情報を得るための手法として、 X線結晶構造解析が広く用いられている。X線結晶構造解析を適用するには、対象となる原子や分子を規則正しく並べる 「結晶化」 という操作を行う必要があるが、 創薬に関わる生体分子の中には、大きな結晶を作成することが困難なものも数多く存在しており、 これらの未知の構造を解析する方法として、新しい光源であるXFELの利用が注目されている。XFELは、従来の放射光と比較して数十億倍の輝度をもつX線パルス光を生成することができる。XFELの明るく短いX線パルスによって、非常に小さな結晶や単粒子の複雑な内部構造を観察できると期待されている。強度が高いX線レーザは、試料に大きなダメージを与えてるが、XFELのパルス光は1回の照射時間が10フェムト秒(fs)という非常に短い時間のため、ダメージを受ける前の様子を捉えることが可能。
研究グループは、XFEL施設「SACLA」によるXFELイメージングと大型放射光施設「SPring-8」の放射光を用いたコヒーレントX線イメージングを組み合わせることで、遺伝子抑制RNA分子を輸送する機能をもつ「RNAiマイクロスポンジ」の内部構造のナノレベルの解析を行い、 RNAiマイクロスポンジ中に高密度領域があることを発見した。このような高密度な核の存在は、遺伝子輸送の機能を持つことを示す直接的な証拠となるもので、効率的な薬物伝達システムの設計に新たな道筋を開くと期待できる。
この実験はSACLAで行われた最初期の生体イメージング実験のうちの1つであり、新たな応用分野へつながると期待できる。

(研究成果は、『Nature Communications』オンライン版に掲載されている)。