July, 10, 2019, 大阪--大阪大学大学院情報科学研究科の清水浩教授・戸谷吉博准教授らの研究グループは、外からの光照射により、微生物の中枢代謝の流れを自在にコントロールする技術を世界で初めて開発した。
これまで培養液に薬剤を加えることで特定の遺伝子の発現を誘導することはできたが、オン‐オフを繰り返しながら動的に中枢代謝の流れを制御する技術はなかった。今回、清水教授・戸谷准教授らの研究グループは、藻類由来のタンパク質を利用した光誘導の代謝スイッチを構築し、大腸菌の中枢代謝経路の制御に応用した。このタンパク質は緑色光下で特定のプロモータの下流の遺伝子発現を誘導し、赤色光下で抑制する。この研究によって開発した株では、主要な解糖系路の流れを緑色光と赤色光の照射により変えることに成功した。光誘導のスイッチによる制御は、細胞の代謝を最適化し、高効率な有用物質の生産プロセスを確立するための有用なツールとなることが期待される。
研究成果は、国際学術雑誌「Metabolic Engineering」に公開された。
研究成果のポイント
・細胞の代謝経路の流れを光照射によりコントロールする技術を開発
・これまで培養液中に薬剤を加えることで代謝を調節していたが、オン・オフ可能な光照射を利用することで代謝を動的に制御することが可能に
・多数の化学反応を経てできる生分解性プラスチック原料など有用物質生産において、微生物の培養プロセスの最適化への応用に期待
(詳細は、http://www.osaka-u.ac.jp/ja)