May, 14, 2019, 東京--東京大学 物性研究所の井上圭一准教授と名古屋工業大学 大学院工学研究科 生命・応用化学専攻の神取秀樹教授らはイタリアのシエナ大学などとの国際共同研究により、ロドプシンのアミノ酸を改変することで、従来より長波長の光で操作が可能な新しい人工ロドプシンタンパク質を作製することに成功した。
ロドプシンは光のエネルギーを使ってはたらくタンパク質の一種であり、動物や微生物の生体内で視覚情報の伝達や、光によるイオンの輸送などを行っている。近年では、光で脳神経回路を調べる光遺伝学(オプトジェネティクス)技術への応用、さらに視覚再生などの医療応用についても強い注目を集めている。
しかし、ヒトを含む動物の生体組織は可視光を強く散乱するため、深部組織へ光を導入することが困難であった。これに対し研究グループは、生体組織による散乱の少ない長波長の光を吸収し反応するロドプシンをアミノ酸変異により作製した。これにより、深部脳組織に導入したロドプシンを光操作することが可能になり、これまで調べることが困難であった脳神経ネットワークのオプトジェネティクス研究が可能となる。また今後、うつ病などの精神疾患の治療法解明へとつながることが期待される。
研究成果は英国のオンライン科学雑誌Nature Communicationsに掲載された。
(詳細は、http://www.jst.go.jp/)