October, 9, 2018, Seatle--アレンインスティテュート(Allen Institute)の研究チームは、マシンラーニングを使ってコンピュータをトレーニングし、人の目が簡単には区別できない細胞の部分を見れるようにした。蛍光ラベルをつけた細胞3D画像を使うことで研究チームはコンピュータに、蛍光ラベルなしで生きた細胞内の構造を見つけるように教えた。これには、明視野顕微鏡として知られる安価な技術で生成された黑と白の画像だけを使った。新技術を記述した研究は、Nature Methodsに発表された。
蛍光顕微鏡は、光る分子ラベルを使って、細胞の特定部分をピンポイントする。これは非常に正確であるが、研究者は一度に2、3の構造しか見ることができない。人の細胞は、20000以上の異なるタンパク質を持ち、いっしょに見ると、健全細胞と病気の細胞の両方について重要な情報が明らかになる。
「この技術によってわれわれは、これまでに可能だったよりも大きな構造を見ることができる。つまり、特に生きた細胞で、誰もできなかった方法で細胞の組織を研究することができる」とGreg Johnsonは話している。
同研究所、エグゼキュティブ・ディレクタ、Rick Horwitzによると、予測ツールは、病気で細胞に生じている問題を研究者が理解するために役立つ。ガン研究者は、その技術をアーカイブ腫瘍生検サンプルに適用し、ガンの進行、処置への反応で細胞構造がどう変化するかの理解を向上させることができる。そのアルゴリズムは、研究者が研究室で臓器を、あるいは他の新しい身体構造を育てようとしているときに、リアルタイムで細胞がどのように変化するかを明らかにすることで再生医療にも役立てることができる。
「この技術は、これらに、また関連分野に膨大な効果を持つ。プロセスが起きているライブを見ることができるが、それはほとんどマジックだ。この方法によってわれわれは、これまでで最も非侵襲的な方法で、以前にはできなかった人の細胞についての情報を入手できる」とHorwitzは話している。
自由に入手できる予測ツールセットと明視野顕微鏡の組合せは、蛍光顕微鏡の置き換えに使うなら、研究コストを下げることができる。蛍光顕微鏡は高価な装置と訓練したオペレータを必要とするからである。蛍光タグも退色しがちである、また光そのものが生きた細胞に損傷を与え、生きた細胞やそのダイナミクスを研究する技術の有用性を制約する。マシンラーニングアプローチにより研究者は、長期にわたり細胞の正確な変化を追跡することができ、初期発生、病気の進行などのイベントを明らかにすることができる。
人の目には、明視野顕微鏡で見た細胞は、白と黒の混ざった嚢に見える。訓練を受けた研究者は、細胞の縁と核、細胞のDNA収納仕切りを見つけることができるが、それ以外はできない。研究チームは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)として知られる、既存のマシンラーニング技術を用いて、細胞のパワーハウス、ミトコンドリアなど、これらの画像を一段と詳細に認識できるようにコンピュータを訓練した。12の異なる細胞構造と、そのモデルが生成した予測画像をテストした。研究者によると、予測画像は、その構造のほとんどは蛍光ラベルをつけた画像と一致した。
論文の著者、細胞科学アレンインスティテュートのモデリングディレクタ、Molly Maleckarは、「当初、もしわれわれの目がある構造を見ることができなければ、マシーンはそれを学習しないと考えていた。マシンは、われわれにできないことを見ることができる。われわれにできないことを学ぶことができる。しかも遙かに高速にできる」とコメントしている。
その技術は、電子顕微鏡で撮った画像から正確な構造情報を予測することもできる。ここではコンピューテーショナルアプローチは同じだ。しかしアプリケーションは異なる、とアシスタント研究者、Forrest Collmanは言う。同氏は、マウスの脳でニューロン間の接続をマッピングしようとしているチームの一員。チームは、その方法を使って、違うタイプの顕微鏡で撮ったニューロンの画像を並べている。通常、コンピュータにとっては困難な課題であり、人にとっては根気のいる仕事である。
Fred Hutchinson Cancer Research Center基礎科学部門、Roger Brentは、研究の一部としてその新しいアプローチを使用し、酵母や哺乳類の細胞を研究する生物学者にとって、顕微鏡の「みる力」を改善しようとしている。
(詳細は、https://alleninstitute.org/what-we-do/cell-science/)