August, 24, 2018, 沖縄--近年は、細菌が持つ抗生物質へ薬剤耐性が重大な危機につながる問題として注目されている。その理由は、細菌が薬剤耐性を持つと従来の細菌対策の有効性が失われ、あたかも医療機関での警報器のスイッチが遮断されるようなものだからである。
代わりとなる新たな細菌対策を評価するために、より効率的な試験方法が求められてきた。このような社会的背景をもとに、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームは新たな細菌の薬剤耐性を試験する方法を開発した。
研究成果は、ACS Sensors に発表された。この論文の中で著者らは、バイオフィルムと呼ばれる細菌同士が集合して形成する粘っこい膜状の形態に着目した。
バイオフィルムは細菌への有利な生育環境を生み出し、さらには既存の抗生物質への耐性を生み出す役割としても機能する。 そのため、もし医療設備の中に細菌が入り込んだ場合、バイオフィルムは恐ろしい脅威となる。
細菌を抑制するための方法を開発する上で、どのようにバイオフィルムが形成されるのかを理解することは重要である。この研究では、バイオフィルム形成を調べるために生物工学やナノ材料工学、プログラミングといった多様な分野のOIST研究者が協力して研究に取り組んだ。
研究チームは、バイオフィルムが形成される動的な過程に注目した。この過程とは、細菌がバイオフィルムの成分を分泌する複数の生化学的な反応に基づく。これらの反応を理解するために必要な情報を寄せ集めることによって、細菌に対する薬剤や化合物の有効性を評価することができる。
これまでに研究者らが望む理想的な観察手法はなかった。
研究チームは、新たな手段を見出すために、ナノスケールの効果を利用した。「私たちは、ナノ構造を持つ基板型のセンサ技術を細菌の薬剤耐性を調べる測定方法に応用した。研究で用いたセンサの表面は、酸化シリコンの幹の上に金の粒子が付いたキノコ形状のナノ構造(以下、キノコ型ナノ構造)で覆われた特殊な構造をしている」と、バーラ博士は説明している。
実験で使用したキノコ型ナノ構造は、白色の光を照射すると特定の色の光を吸収する性質をもつ。これはナノ構造から生み出される「局在表面プラズモン共鳴」と呼ばれる現象に基づく。この原理を応用すると、センサ基板の表面から裏側に透過した光の色(スペクトル)を測定することにより、細菌の増殖量の測定が可能となる。この測定方法の場合、観察対象を邪魔することなく、また細菌の増殖過程に影響することもない。
センサからの光応答を連続的に測定できれば,リアルタイムな測定が可能だが、そのためには測定用のソフトウェアの抜本的な改良が必要になる。もプログラムを専門とする同チームのチュウ技術員によってこの問題を解決した。
現在、ナノ構造、生物工学、プログラミング技術というこの3つの専門性を組み合わせることによって、多くの研究現場で利用が可能となる卓上型の装置の開発を進めている。また、研究チームは幅広い応用を目標に、持ち運び可能な小型装置の開発も計画している。
(詳細は、www.oist.jp)