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コメットモスのシルクファイバを真似て「エアコン」繊維を作製

June, 4, 2018, Ann Arbor--マダガスカルコメットモスのコクーンファイバの光学特性研究で、コロンビア大学工学部(Columbia Engineering)チームは、太陽光を反射し、光信号と画像を伝送するファイバの類例のない能力を発見した。また、天然ファイバのナノ構造と光学特性を真似た人工ファイバを紡ぐ方法も開発した。
 蚕ファイバから作られた布は、その美しい光沢と爽やかな涼しさが高く評価されていた。コロンビア大学のチームは、野生カイコガ、マダガスカルコメットモス(Argema mittrei)の毛虫が作るファイバが、光沢と冷却特性の点で遙かに優れていることを発見した。コメットモスのコクーンファイバは、傑出した冷却特性を持つだけでなく、光信号や画像を伝送する並外れた能力も持つ。
 研究チームは、コメットモスファイバに発見した1次元ナノ構造に関連する光学特性を評価した。さらに、その天然ファイバのナノ構造と光学特性を真似た人工ファイバを紡ぐ技術も開発した。研究成果は、Light: Science & Applicationsに発表された。
 帰化蚕が作る個々のファイバは、光学顕微鏡下では固い、透明なシリンダーに見えるが、コメットモス毛虫が紡ぐ個々のファイバは強い金属光沢を持つ。コメットモスのファイバは、ファイバに沿って高密度ナノスケール繊維状空気細孔があり、それが光の強い鏡面反射の原因となっている。直径50µm程度の1本のファイバは、可視光の70%以上を反射する。それに対して、絹織物を含む普通の布がその反射レベルに達するには、コメットモスの約10倍の層厚となるように透明ファイバの多層に重ねなければならない。加えて、コメットモスファイバの高反射率は、可視光範囲を超えて赤外スペクトルに及ぶ。これは、人の眼には見えないが、太陽エネルギーの約半分を含む。UV光を吸収するそのファイバの能力とともに、これは、UV、可視光、赤外成分を含む太陽光のブロックに理想的である。
 光をガイドするコメットモスファイバの能力は、横断アンダーソン(Anderson)局在として知られる効果であり、ファイバに沿った繊維状空気細孔の結果でもある。空気細孔は、ファイバ断面に強い光散乱を起こし、横方向の光閉じ込めの原因となるが、ファイバに沿った光伝播の妨げにはならない。
 「この導光形式は、横方向の光漏れがない一筋の素材内部で伝播するように光を閉じ込めるもので、海底光ファイバケーブルの光伝送で使用するものと大きく異なる。光ファイバでは、ファイバコアとクラッド層の間の境界での反射による光閉じ込めが行われる。横断アンダーソン局在が天然の材料系で発見されたのこれが初めてである。この発見は、生体適合性が求められる導光、画像伝送、集光の潜在的なアプリケーションを開くものである」と論文の主筆、Norman Shiは説明している。
 研究チームは、コメットモスファイバの評価を終え、次にコメットモス毛虫の紡糸機構を真似る新しいファイバ線引き法の開発に取りかかった。コメットモス毛虫は、高密度の特殊な、つまり繊維状空気細孔に埋め込まれたファイバを作り出す。研究チームは、天然ファイバよりも数倍高密度の空気細孔を達成した。1本の生物模倣ファイバ、太陽光の~93%を反射することができる。研究チームは、2つの材料を用いてこの生体模倣ファイバを作製した。自然の材料(再生シルク、絹の液体先駆体)と合成ポリマ(ポリフッ化ビニリデン)である。前者は生体適合性が求められるアプリケーションに適しているが、後者は高スループット製造に適している。
 生体模倣ファイバは、「冷却」特性を持つ極薄夏衣服の作製に利用できる。繊維のわずか数層が完全不透明布地を作る。厚さは1枚の紙以下。しかし装着者が汗をかいても光を透過して透けることはない。この点は、従来の布地共通の問題であった。汗が、光を反射するファイバと空気の相互作用の数を減らすことで通常の布の不透明性は低下するが、生体模倣ファイバに埋め込まれたナノスケール空気細孔には影響が及ばない。加えて、「多孔質」?EDFA作られた極薄アパレルは、汗の発散、人の身体のマイクロ環境と外部とのエアーフローと組み合わされて冷却を促進する。
(詳細は、http://engineering.columbia.edu/news/comet-moth-fabric)