January, 5, 2018, Eindhoven--空気がどの程度きれいか、食物が新鮮か、あるいはシコリが悪性かどうかをスマートフォンを使って調べる。新しい分光計により、こういうことのすべてが近いうちに実現する。分光計は、携帯電話に簡単に組み込めるほどに小さく、安価。TU/eで開発された小型センサは、科学実験室で使用される通常の卓上型モデルと同じ精度。研究成果は、Nature Communicationsに発表された。
可視光、不可視光を分析する分光計には非常に広範囲のアプリケーションがある。すべての材料、すべての組織は、光吸収と反射に関して、それ独自の「フットプリント」を持ち、従って分光計で認識できる。
しかし高精度分光計は、光を異なる色(周波数)に分けて個別に計測するので、大型である。光が分けられた直ぐ後、周波数が違うビームは、まだ互いに重なっている。従って高精度計測は、分光後、数十センチでしかできない。
アイントホーフェンの研究チームは,精巧なセンサを開発した。特別な「フォトニック結晶キャビティ」を使い全く異なる方法で、そのような正確な計測ができるセンサである。この特殊フォトニック結晶キャビティは、わずか数マイクロメートルの「トラップ」であり、光はそこに入ると逃げることはできない。
このトラップを膜内に収め、それに捉えられた光が微弱電流を生成し、それが計測される。PhD学生Žarko Zobenicaがそのキャビティを作製した。それは非常に高精度であり、極めて狭い周波数間隔を維持しているので、その周波数の光だけを計測する。
もっと広い周波数範囲を計測できるように研究チームは、2つの膜を非常に近づけて上下に設置した。2つの膜は相互に影響し合う。両者の距離がわずかに変わると,センサが検出できる光周波数もシフトする。
この目的のために研究チームはMEMSを組み込んだ。この電気機械メカニズムにより、膜間の距離が変わり、それによって計測される周波数も変わる。
結果的に、センサは30ナノメートル(nm)の波長範囲をカバーする。この範囲に、分光計は数十万の周波数を区別できる、これは前例のない精度である。これが可能になったのは、研究チームが膜間の距離をわずか数十フェムトメートルに正確に決めることができるからである。
その有用性を証明するために研究チームは、ガスセンサを含め、いくつかのアプリケーションを実演した。また、2つの膜の相互関係が変わると検出周波数が変わることをうまく利用することで、極めて高精度なモーションセンサも作製した。
Andrea Fiore教授は、新しい分光計が実際にスマートフォンに入るのは、まだ5年以上先になると見ている。これは,カバーできる周波数範囲がまだ小さすぎるからである。現状、センサは,最も一般的なスペクトル、近赤外の数%に過ぎない。研究グループは、検出できるスペクトルを広げることに取り組んで行く。また、マイクロ分光計に特別な要素、光源も組み込む。これによりセンサは、外部光源から独立になる。
(詳細は、www.cursor.tue.nl)