November, 24, 2017, Ness Ziona--国立衛生研究所(NIH)とシカゴ大学の研究チームは、従来のガラスカバースリップから反射型ミラーカバースリップに換え、結果として得られたデータを処理する新しいコンピュータルゴリズムを提供することで、光学顕微鏡のスピード、解像度、光効率を改善した。
国立バイオメディカルイメージングとバイオエンジニアリングの研究部門、高解像度光学イメージング(HROI)チーフ、Hari Shroff, Ph.D.とその研究チームは、数年かけて、高解像度画像を高速に生成する光学顕微鏡を開発した。開発後、NIHの成果をどんな研究者でも複製できるように、無料プランとソフトウエアをリリースしている。
この最新の顕微鏡は、Shroffの研究室が選択的平面照明顕微鏡法(SPIM)で実現した以前の改良をベースにしている。SPIMシステムは従来の顕微鏡とは違っている。光シートを使ってサンプルを刺激し、光を撮像サンプルプレーンに露光させるだけである。イメージングされるサンプルの一部(サンプル全体ではない)しか光にさらされないので、サンプルへの全体的な損傷は少ない。したがって、SPIMシステムは従来の顕微鏡よりも穏やかである。
2013年、ShroffのチームはHROIラボで、diSPIMを開発した。diSPIMは、2つのサンプル像が得られるように2レンズ装備である。両眼を使用するように、1眼よりも深度と3D感度は優れている。デュアルビュー顕微鏡により、従来のシングルビューイメージングよりもはるかに鮮明で解像度が優れた3Dイメージングが可能になる。2016年、研究チームは第3のレンズを追加した。これにより3Dイメージングにおける光効率と解像度がさらに改善できる。
サンプル撮像に使用されるレンズは大きく、1個の細胞内の細胞以下の詳細構造、あるいは虫の胚の神経発達をはっきりと撮像するにはサンプルに近づける必要がある。サンプル周囲の空間は、各付加レンズでますます制約されることになる。
研究チームのソリューションは、概念的にシンプルで、相対的にローコストだった。さらに多くのレンズを詰め込む方法を見つける代わりに、ミラー型カバースリップを使う。
「われわれはレンズそのものを使って従来の方法でサンプルを見ることはできるが、同時にミラーによって得られるサンプルの反射画像を記録している」とShroffは説明している。
一つ厄介な問題は、通常の光景と反射された光景の両方とも光源によって生成された不要な配景を含んでいることである。この問題に対処するために、研究チームはシカゴ大学のPatrick La Riviereのグループと密接に協力した。La Riviereはコンピュータイメージングの専門家であり、不要な配景を特定して除去し、画像を鮮明にするコンピュータ処理ソフトウエアの作成を手助けしてくれた。
コンピュータソフトウエアとともにミラー型カバースリップを使うことでチームは、顕微鏡ハードウエアの変更なしで従来のdiSPIMシステムを使う場合と比較して、2倍高速に、解像度もほぼ2倍に改善することができた。その技術の付加的利点は、ミラー型カバースリップで、サンプルに対する全体的な露光を増やすことなく、顕微鏡がサンプルからより多くの光を集めることができることである。その結果、diSPIMと比較して、効率が2~3倍向上した。研究チームは、将来、この技術が他の形態の顕微鏡にも適用される可能性を期待している。
(詳細は、www.nibib.nih.gov)