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Empa、新生児黄疸治療に光ファイバ照射パジャマを開発

November, 8, 2017, Zurich--誕生後黄疸に罹っている赤ん坊は、短波光で治療される。スイス連邦材料試験研究所(Empa)の研究チームは、保育器での治療を置き換える光照射パジャマを開発した。新生児は、母親の腕の中で温かく幸せな気持ちで健康を回復することができる。
 現在、新生児の黄疸治療は保育器の中で独り、裸で、眼を保護膜で覆われながら行われる。黄疸の新生児の皮膚に血液色素の毒性分解産物が堆積するので、保育器の中で青色照射が必要になる。Empaの生体模倣膜および繊維の研究チームは、治療と新生児のニーズを結びつけることで、子供に優しくない処置を大幅に改善した。Luciano Boeselをリーダーとするチームは、治療を幸福経験に変える赤ん坊向けの光照射パジャマを開発した。バッテリ駆動LEDsが光導波繊維の光源となる。従来の糸とともに、光ファイバがサテン材料に織り込まれ、繊維全体にまんべんなく光を供給する。研究成果は、Biomedical Optics Expressに発表された。
 約160µm径の光ファイバサイズは通常の糸に一致する。研究チームは、製織中に糸が曲がらなければならない適切な角度を定めた。これは青色光が治療波長光470nm付近にあり、織物にとどまるのではなく、赤ん坊の皮膚に放出されるようにするためである。最良の結果は、サテン布を織る、いわゆる6/6ボンドの製織プロセスで達成された。この場合、光ファイバは従来の糸との交点が特別に少ない、これは光が均一に皮膚に照射されるようにするためである。
 このように織られたフォトニック繊維は、患者が身につけ、抱きかかえられるようにロンパー、寝袋に織り込むことが可能である。パジャマは商用利用向けに生産され、赤ん坊の皮膚に内部から光を照射するだけなので、もはや新生児はうっとうしい保護マスクをつける必要はない。治療光が患者の顔に当たる保育器と違い、光パジャマの短波照射は赤ん坊の敏感な眼に届くことはない。
 論文の筆頭著者、Maike Quandt氏は、「そのフォトニック繊維は洗濯でき、皮膚が耐えるものである」と言う。体温調節モデルで、研究チームは光繊維がどの程度通気性があるかを調べた。Empa独自の皮膚モデルの一つは、そのパジャマが皮膚の摩擦という点でも非常に良好であることを証明した。「サテン繊維は滑らかで、一般的なベイビーワンジーの着心地の良さに合致している」と材料研究者は話している。
 幼児の黄疸は一般的な現象である。これは、赤ん坊の代謝が生後数日内には活発にならないためである。通常、肝臓は体内の多くの毒性を処理する。しかしヘモグロビン分解で、まだ子供の肝臓は圧倒されている可能性がある。毒性分解産物ビリブリンが大量に蓄積すると、目に見える黄色の沈着が皮膚に大量に生ずる。ビリブリンが一定の閾値を超えるとその状況は危険になり、黄色色素が脳に損傷を与える。黄疸の重篤ケースでは、脳損傷は、輸血でしか防げない。
 今日、保育器の中の光治療は、間に合えば、このような劇的な展開を防ぐ。青色スペクトルで強度30µW/㎝2光は、ビリブリンを可溶性の形態に変え、これは患者の未成熟器官で容易に除去可能である。そのパジャマのプロトタイプは、現在、低い光強度でフォトニック繊維から青色光を放射する。「商用生産では、パジャマの光強度は若干強くしなければならないが、より強いLEDを使えばいいだけなので、これは大きな問題ではない」とMaike Quandt氏は話している。